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46 心 ページ46

「うわぁ先生!え、どうしたんですか」


 その日、Aが担当編集者のデスクに向かうと、開口一番にそう叫ばれた。


 周りも少しザワついている。


 何故なら彼女はいつも呼ばれる側で、自ら此処に来るのはこれが初めてであるからして。


「どうしました?真逆書くことを終えるお心算とか?」


 冗談なのか笑んで編集者は云う。
 心中では大量の汗をかきながら。


 対照的にAは、とても穏やかな表情で。


「あの……終わりました」

「え」

「だからあの」

「未だ書けないんですか!だからあの事を……だから辞めるとか!?いやちょっと!ごめんなさい!」


 あ、云い方悪かった。相変わらず話聞いてくれない……悪い人じゃないのに。


 広い編集室にキンキンと響く。よくある事なのか、また始まった、みたいな顔して皆特に気にしなくなった。
 

 ま、見て頂いたら善いでしょう。


 そして何か捲し立てる様に嘆いている、そんなBGMをききながら、Aは鞄から紙の束を取り出す。


「あの」


 それを静かに編集者の目の前に置いた。


 ピタッと、止んだ。


「書き終えました。読んでください」

「え、は」


 また、周りがざわつき始める。


 先生が小説を……?
 いつぶりだ?

 いや、というか


 と、そこにいた人間は、ほとんどがそう思った。


「ごめんなさい、遅くなって」


 いや、まあそうだけど、真逆、今?
 この大変な時に?
 書いてくるか?


「いやその、今で済みません」

「いえいえ、丁度暇だったので」


 アポくらい取ってくれ……。


「お電話せずに済みません……今度から絶対アポイントメントは取ります」

「え」


 え?この人、ん?人の心?あるいは未来?を、読めるの?異能力?


「いや別に読んでるのではなく」


 心の中で思った事と会話しないで!
 え、もしかして、巷で噂の、そういう異能りょ


「いや異能とかじゃなくて。済みません、只、表情とかが読み易いだけなんです……まあ」


 まあ、力は力でも、
 異能力ではなく、


 想像力、だったり。


「……………私は」


 編集長の口はあんぐりと。


 これは小説家なら、
 誰でも持っている異能力、だから。


「私は、書く事を、止めません」

47 原稿→←45 必要悪



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 怜さん» 怜様、ご感想ありがとうございます!お優しいお言葉で、泣きそうでございます。これからも頑張ります! (2022年1月31日 20時) (レス) @page45 id: 05323f7eaa (このIDを非表示/違反報告)
- 場面を想像させる様な綺麗で幻想的な文に、しっかり作りこまれた物語。今まで読んだ織田作の夢小説の中で1番好きです。これからも頑張って下さい。 (2022年1月31日 1時) (レス) @page45 id: 64384c94d7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 柊 琥珀さん» 柊 琥珀様、ご感想ありがとうございます.......! 嬉しい.......! (2022年1月9日 0時) (レス) @page42 id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 書き方が好みだ……。 (2022年1月8日 17時) (レス) id: 17f9b038b0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Asukaさん» Asuka様、ありがとうございます!めっちゃ頑張って書きます! (2021年8月24日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月27日 0時

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