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41 水底 ページ41

ゆら ゆら
 ユラユラ


 堤Aは水に浮いていた。


 風は緩やかで、自身の呼吸が聞こえる。


 暗い海の底から、冷たい水と白い泡が肌を包み、然しこんな季節だからか、何処か丁度良い心地。


 熱に、手を掴まれた。


「…………………」


 視線を動かすと、矢張りそこには織田がいるのだろう。
 暗くてよく見えないが、分かる。


「…………」

「ぁ」


 ぎゅっと強く、握られた。


 気が付く。


「すい、ません」


 なんか、
 凄い事した気がする。


 スカッと、した。


 吃驚も、した。


「…………」


 ぷかぷかと浮いたまま、見上げた先の空を見る。


 とても深い、黒だった。


「いい」


 彼は、
 静かに応えるだけ。


 咎めて来ない。
 責めて来ない。
 問うて来ない。


 だから、


 何でも云っちゃうのかな?


 でも。


「済まなかった」

「……………」


 何も、云えない。


「小説家、というのは」


 小説を書くだけではない。
 その前後がある。


 小説を書くだけでなく、
 それは本になり、
 評価され、


 人を繋ぐ。


 だから、


「さまざまな柵みがまとわりつくのだろう」
 

 だからあの日、




 Aは本屋に入れなかったのだ。


 入らなかったのではなく、
 入れなかったのだ。




 売れていても、


 売れていなくても、



 彼女にとって、
 自身の名前が書かれた本が並ぶ本屋は、恐怖でしかなかったのだろうか。




 オレが憧れるその場所は、




 Aにとってーーーー

42 星→←40 彼女



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 怜さん» 怜様、ご感想ありがとうございます!お優しいお言葉で、泣きそうでございます。これからも頑張ります! (2022年1月31日 20時) (レス) @page45 id: 05323f7eaa (このIDを非表示/違反報告)
- 場面を想像させる様な綺麗で幻想的な文に、しっかり作りこまれた物語。今まで読んだ織田作の夢小説の中で1番好きです。これからも頑張って下さい。 (2022年1月31日 1時) (レス) @page45 id: 64384c94d7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 柊 琥珀さん» 柊 琥珀様、ご感想ありがとうございます.......! 嬉しい.......! (2022年1月9日 0時) (レス) @page42 id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 書き方が好みだ……。 (2022年1月8日 17時) (レス) id: 17f9b038b0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Asukaさん» Asuka様、ありがとうございます!めっちゃ頑張って書きます! (2021年8月24日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月27日 0時

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