織田作之助と真っ白な頁の波に漂う【文スト】

38　小説家 ページ38

で、その執筆中にね。


　上巻・中巻、とても良い感じにまとまって、
　決まっていた最後にもドンピシャで、


　ああこれは最高傑作になるだろうって。


　下巻をワクワクしながら書いてたんですけど。


　でも。


　でも、


　書いてたら、違うなって、なりました。


　一旦決めていた最後を書きました。
　でも、違うなって、思って、書き直しました。


　でも、また、違うなってなりました。


　これより面白い小説が世の中にごまんとあるから、それを超えないとって焦ったのでしょうか？


　でも、私は至って冷静でした。


　どうしたって、
　どうしたって。


　でも私はどうしても、自分が納得出来る最後が書けなくて……初めて、休載しました。


　どうしても、その小説が死んでしまうようなプロットしか思いつかない。


　もしかしたら、


　最後を書かなくていいのでは？
　と思いました。


　この物語は、このままがいいのでは？


　無理に完結せずとも、
　それが一番なのでは？


　物語は、終わらなければならない？


　終わらなくていい物語も、あるのでは？


　上巻と中巻はそのままに、
　下巻だけ無かったことにしたい。


　下巻は存在してもいいけど、最後の頁だけ破り捨てたい。


　そんな物語も、アリなのでは？


　ごちゃごちゃと理由を謳って、


　読者を待たせて、
　本屋や図書館を待たせて
　編集部を待たせて、
　小説を待たせて、


　..................、


　..........今でも、


　今でも、
　その最後、実は書けてないんです。






　はい。


　はい、発売されましたよ、全巻。




　私の名前で。





　その物語は、
　完結されられたんです。





　私は、小説家だから、と。




　
「私は、書いてないのに、
　書いた事に、されちゃいました」

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