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29 記憶 ページ29

ぼーっとし過ぎて、
次の思考をしている間に、


 織田作さんは、一つ先に行ってしまう様で。


「…………」


 あぁ、そうだ。
 そういえば、家まで一度も送って貰った事はなかった。


「…………」


 ああ、えっと、私、倒れちゃったんだっけ……?


「思い出さなくていいぞ」


 その言葉通り、Aは思考を止めた。
 何だかとっても、気持ちの悪い感じがしたから。


「はい」


 よく分からないけれど、


 その鼓動は落ち着いていき、


「ありがとうございます」


 軈て自然に、
 笑えた。


「…………」


 徐ろに脇に腰掛け、


 ぽんぽん、とAの頭を撫でると。


 そのまま。
 ぽや〜といった感じで。


「……………」

「…………………」


 めっちゃ見てくる……。


 目を細めて、頭をずっと撫でてくる。


 ど、どうしたのだろう
 織田作さん。


 私、そんなに、されたら……


「熱か?」


 やっぱり、顔が紅くなっているようで。


「どうしたらいい」


 その角張った指は髪をかき分け、
 耳を通り越して頬を伝い、


 唇に触れた。


「…………」


 目を閉じたら。


 先程とは違って、


 無音で、
 あったかくて、
 柔らかい。


「……っ、ん」


 全く息苦しくない。


 甘くて甘くて、
 心地がいい。


「…………」


 名残惜しそうに零距離を空け、
 彼は立ち上がる。


「済まん……他に何かいるか?」

「い……え」


 充分過ぎる。


 そうしてAは、
 漸く呼吸した。


 織田は扉を開けると、


「まあ休め」


 そう云ったので、


「はい……おやすみなさい」


 そう云った。


 Aが頭まで布団を被ると、
 部屋の明かりが消える。


 そして微かに部屋の外で、彼の足音が聞こえて。


 我に返って。


「…………」


 緩んだ顔の表情筋は、


「………………」


 絶対誰にも、見せられない。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 怜さん» 怜様、ご感想ありがとうございます!お優しいお言葉で、泣きそうでございます。これからも頑張ります! (2022年1月31日 20時) (レス) @page45 id: 05323f7eaa (このIDを非表示/違反報告)
- 場面を想像させる様な綺麗で幻想的な文に、しっかり作りこまれた物語。今まで読んだ織田作の夢小説の中で1番好きです。これからも頑張って下さい。 (2022年1月31日 1時) (レス) @page45 id: 64384c94d7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 柊 琥珀さん» 柊 琥珀様、ご感想ありがとうございます.......! 嬉しい.......! (2022年1月9日 0時) (レス) @page42 id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 書き方が好みだ……。 (2022年1月8日 17時) (レス) id: 17f9b038b0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Asukaさん» Asuka様、ありがとうございます!めっちゃ頑張って書きます! (2021年8月24日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月27日 0時

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