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23 世界を滅ぼさんとする善 ページ23

「ホットを一つ」


 そう伝え、Aは窓際に上品に腰掛ける。


 持ってきてしまった。
 私の本。


 テーブルの上に置いてみて。


 出版社で見るのと、
 家で見るのと、
 本屋で見るのと、
 

 全然違う感じだとAは思った。


 同じどきどきなのに、


 特別などきどき!


「と」


 そして、
 隣にAが読む、白い本を置く。


「うん」


 全然違う感じ!


 表紙を捲ると、


【 海の見える部屋で 】


 彼の願いが見えた。
 途中で、止まっているけれど。


 パタンと閉じて、隣の本を見て。


「…………」


 まだかなぁ、
 織田作さん。


 この本は本当に自信作だから。


『読み終えた後、
 心に残るその温もりは、何ですか?』


 そんな文字が連なる帯に触れる。


「今」


 何だか今、あの頃と同じ様な文章が書けそう。


 情景が、文字が、溢れそう。

 
 例えばポートマフィアと警察……政府辺りに属する二重スパイの話とか。


 例えば世界を滅ぼさんとする善から世界を護る悪の話とか。


 例えばこのお店に車が突っ込んで来て、その前にそれを察知したヒーローに助けられるとか。


「むー」


 人を待っている時程、想像が捗るなあ。


 こういう話なら幾らでも、
 書けてしまう。


 こういう話なら。


 こういう話なら。


「……………………」


 あ、え?


 もうこんな時間。


 何時の間に。
 珈琲も冷めている。


「…………」


 何時もなら、二人でいるから、時が経つのも早いけど。


「今、寝てたっけ」


 今日は一頁も進んでないのに。


 今日は一言も喋ってないのに。


「………」


 深い夜に、落ちて行く。


 カララン


 然し沈んだ顔を上げ、
 ベルの鳴った入口へ、


 目を向けた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 織田作之助 , 太宰治   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 怜さん» 怜様、ご感想ありがとうございます!お優しいお言葉で、泣きそうでございます。これからも頑張ります! (2022年1月31日 20時) (レス) @page45 id: 05323f7eaa (このIDを非表示/違反報告)
- 場面を想像させる様な綺麗で幻想的な文に、しっかり作りこまれた物語。今まで読んだ織田作の夢小説の中で1番好きです。これからも頑張って下さい。 (2022年1月31日 1時) (レス) @page45 id: 64384c94d7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 柊 琥珀さん» 柊 琥珀様、ご感想ありがとうございます.......! 嬉しい.......! (2022年1月9日 0時) (レス) @page42 id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
柊 琥珀(プロフ) - 書き方が好みだ……。 (2022年1月8日 17時) (レス) id: 17f9b038b0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Asukaさん» Asuka様、ありがとうございます!めっちゃ頑張って書きます! (2021年8月24日 20時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年6月27日 0時

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