【コラボ】傷を癒すために【歌い手】

絶対に行くよ〜女主視点〜 ページ11

「空は…」
俯いたまま小さな声で呟くナノ君


それを聞き落さないように耳を傾ける



「―――いつもみたいにヒョコッと戻って来るよ」
『…ナノ君』

無理やり笑顔を作って笑うナノ君

そんなに言えないこと、なのか…



『そ、だね…』
でも…きっと理由があってのことなんだろう



あ、どこに行ったのか知らない

『ナノ君…空がどこに行ったか、教えて？』
今度は黙り込まずに携帯でなにかを確認して口を開いた


「空は…――アメリカに行ったよ」
『……え、』

教えてくれたが、それは衝撃的な答えで――――



「柚子！！」
「おい、待て！」
歌詞君とナノ君に掴まれる


『……あ』
無意識のうちに走り出そうとしていた

だって…空君がアメリカに…？
嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だっ

アメリカなんて、遠すぎるよ…空君


『どうしてっ』
またなにも言わずに行ってしまうの？
今度は遠くへ？

どうして……？


「柚子！」
『っナノ、君…』
両頬を手で挟まれて目を合わせられる
涙が溢れて視界が歪む


「空は目的があってアメリカに行ったの

―――大丈夫、アイツが会わないって言っても絶対に会わせるから…今は、ね？」

『あ、たりまえっ』
「柚子…」

歌詞君に頭をなでられる
子供扱いしないでと言えば笑われた

「ごめんね…本当手のかかる弟だ…」
『それが空君だよ…』


うん、きっと大丈夫

吹っ切れたわけじゃないけど

不満はいっぱいあるけど


今は…―――――




『…次あった時は言いたいこと一杯言ってやる』

覚悟しとけ、空君！




―――――今は前だけ向いていよう



さぁ、今からそらる様達に説明しなくては！

『…ナノ君頑張ってね』
「なにを？」
あれ、と皆がいるところを指差す

と、ナノ君の顔がひきつった


案の定そらる様はご降臨なされていて…






明日からまた、騒がしい日常が始まるんだろうな

そこに空君がいないのは少し寂しいけど


姫歌ちゃんとも仲良くしていきたい

私は一人じゃない
空君のおかげで…







「――――――」

声が、聞こえた気がした


不意に空を見上げる


『綺麗な青だ――…』
「そうだね」
…答えてくれる人がいる





『絶対に行くからね』





清々しいほど晴れた空に白い飛行機雲が一筋、光っていた

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