【コラボ】傷を癒すために【歌い手】

記憶のなか〜女主視点〜 ページ1

「柚子…」
空君の声がする


でも、目を開いて確認する気力なんてもうない

何か言い争っている声もするが…なに言ってんだろ…




男に抱えられてからの記憶は曖昧すぎてよくわからないし

あの後、この人は何かをブツブツと言っていたけど
まったく耳に入らなかった

ちゃんと聞いてれば役にたったかもしれないのに
……悔しい


今感じるのは頭を殴られているような酷い頭痛、髪を引っ張られる感覚

そして、聞きなれた…落ち着く声


なんだか本当に落ち着いてきて
さっきまでの気持ち悪さがどんどん良くなっていくような気がして
今すぐにでも眠ってしまいそうだ

だけど、眠ってはいけないと本能的ななにかが言ってる…


―――――気がする


私は話し声を聞くわけでも、状況を把握するわけでもなく



ただただ目を閉じて………思い出していた




数年前からの記憶

少しずつ…
本当に少しずつではあるが、確実に



楽しいことや、苦しいこと…悲しいことまで

笑っていたり、泣いていたり、怒っていたり


いろんなことが映像となって流れて行くのを見逃さないように見つめていた

不思議なことに、思い出に対してなんらかの感情がわくと思っていたが
特になにも思わない

私はこんなに薄情な奴だったのか……

それとも、もういらないモノだったのか……？

もうどうでもいいけど




そこでふと違和感に気付く


友達のことは沢山でてくるのに…


どうして？





―――――家族のことが全く見えない


たまに見える大人は、親しげにしていても親ではない



どうして……？

これから〜男主視点〜→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す