ナオミとイヴ ページ7
与謝野さんが、男に歩み寄った。ボキボキと手を鳴らす与謝野さんに怯んだ男は後ずさった。与謝野さんの後ろで、男の仲間たちが伸びている。
「な、なんだお前……！！！口を閉じろ！！」
「医者に向かって随分と生意気な口を聞くねぇ。妾には分かるよ、腕に切り傷があるんだろ？今治療してあげるよ」
アンタの仲間は妾の治療に満足したってさ！
与謝野さんは流れるような動作で男を羽交い締めにした。暴れる男を押さえ付けながら、「ナオミ！携帯電話！」とこちらに叫んだ。
はい！と返事をしてナオミさんは携帯電話を取り出し、一、一、〇を打ち込む。
「もしもし、警察ですか？……はい、事件です───」
私はほっと胸を撫で下ろした。よかった、私が何かする必要もなく事件は収束しそうで。
だから私は油断していた。背後から近寄る人影に気づけなかった。与謝野さんの後ろで伸びていたうちの一人がふらふらとやって来るのに気付いたのは、その男が声を上げてからだった。
「クソッ……やりやがってぇ……ッ警察なんか呼ぶんじゃねぇよ！！」
「ッナオミさん危ない！！」
思わず叫んだものの間に合うはずなく、男はナオミさんの首を掴んで持ち上げた。ナオミさんが苦しそうに顔を歪め携帯電話を落とす。
どうしたらいいどうしたらいい？私はナオミさんを見捨てるの？
────彼らに決して、心を許してはいけません。彼らに決して、耳を傾けてはいけません。ぼくの言葉を、片時も忘れてはなりません。
「うっ……ッ」
ずきんと頭が痛んで抱え込む。そうだ、私は中島さんと鏡花を、探偵社を滅ぼすためにここにいる。ナオミさんにだって心を許すなんて決してあっていいはずがない。
────ふふ、Aちゃん。こういうときは素直に甘えるものですわよ。
……本当に？私は本当に、探偵社を滅ぼすの？こんなに優しいナオミさんを、探偵社を裏切る覚悟が私にあるの？
────アリスちゃん。ナオミは事務員ですから、あんまり詳しくは知らされてませんけど。貴女は
このあと、ナオミさんは何て言おうとしてたの？このままナオミさんを見過ごしていいの？
「ナオミさん！……今……助、けッ」
「ナオミに手を出すな」
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作者名：ふわふわありす | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時：2023年11月16日 21時
