犯罪者のイヴ ページ6
突然、銀行内の空気が凍り付いた。ナオミさんも異変に気付いたようで、私から顔を離して周囲を見渡している。
その原因は明らかに、たった今銀行に入ってきた数人の男達だった。パーカーのフードを深く被っていて顔は見えないが、恐らく二十代くらいだろう。
うち一人が大股で窓口へ真っ直ぐ進み、並ぶ人々を押しのけて窓口の前に立つ。銀行員の女性は顔面蒼白だった。
「金を出せ金を!!!今すぐに!!持ってこれるだけだ!!」
──まあ、なんと模範的な銀行強盗だろう。絵に描いたようなとは正にこのこと。
男はスタンガンと思わしき物を女性へ突き出した。怯えた銀行員達はおろおろしながらお金を引き出している。強盗仲間の人達はそれぞれ入口を塞いだり、誰か警察を呼ばないよう監視していた(携帯を回収されてる人もいた)。
正直こうもあからさまな犯罪行為というのは頭が悪いとしか言いようがないし、(数多の犯罪を犯してきた)私には大した脅威には思えない。
でも他の人は違う。みんな震え縮こまり、小さな子は泣いている。ナオミさんは私を庇うように立っていた。
銀行員がそっと札束を差し出した。
「持って、きました……」
「……本当にこれだけか?これで全部か?そんなはずないだろ!?」
男が物凄い剣幕で机を叩いた。銀行員は小さくごめんなさい、ごめんなさいと謝罪しながら後ずさる。
何かするべきだと思った。こんなに怖い思いをしてる人がたくさんいるし、私自身も此処に拘束され続けるのは困る。
助けようと思えば助けられるかもしれない。でも人々や探偵社員の前で
───私はどうするべきか、どうしたらいい?何もしなくていい?
「おやおやぁ、ちょっとお兄さん?アンタ
与謝野さんが、男に歩み寄った。ボキボキと手を鳴らす与謝野さんに怯んだ男は後ずさった。
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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時:2023年11月16日 21時