優しいひとたちとイヴ ページ23
「おや、見ない顔だねぇ。お友達かい?」
「はい、友達です。色々あって今は探偵社にいるんです。ね、Aさん」
「あ、はい。えっと……矢川Aっていいます」
宮沢さんの言葉に頷き返して自己紹介をする。お婆さんは更にしわを深めて笑うと、「ちょっと待っておいで」と店の奥へ入っていった。
一分もしないうちに戻って来た彼女は、小さい四角い缶々を持っていた。
「Aちゃん。ちょっと手を広げて御覧」
「?はい、こうですか?」
とんとん、と手の平を缶々で軽く叩かれる。するところりとびい玉のようなものが転がり出てきた。少しぺたぺたしているけれど、つやつやできらきらで鮮やかで、まるで硝子細工のそれは飴玉だった。
「綺麗……あっ、その、お金はどうしたら」
「それはおまけだから、お金は要らないよ」
お婆さんは優しい声で言った。でも、と口を開きかけると、鏡花がそれを遮った。
「A。こういうときは素直に甘えて、感謝をすればいい」
鏡花の表情筋は相変わらず全然動かないけど、何となく柔らかい雰囲気が伝わってきた。
似たようなことをナオミさんにもこの前言われた気がする。甘える、甘える。そうか、たまには甘えればいいんだ。
「えっと……ありがとうございます」
ぎゅっと飴玉を握り締めて伝える。お婆さんは満足げに微笑んだあと一言、「握り締めると飴玉溶けちゃうよ」。慌てて口に放り込んだ。
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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/
作成日時:2023年11月16日 21時