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帰ろうよイヴ ページ15

「そういえば、言い損ねましたけど。Aちゃん」



 こちらに目を向けて、ふわりと微笑んだ。



「貴女は探偵社にいるんですから、探偵社は月羽さんのことも突き止めてみせますし……何より此処は、貴女の居場所ですわ」



 思わず足が止まった。その場に立ち尽くして、ナオミさんの方を向いた。彼女の暖かい黒曜石の瞳に、私の昨日より鮮やかな紅玉(ルビー)の瞳が映り込んでいる。

 気が付いたら涙が零れていた。さっきの与謝野さんの言葉が脳内に響く。
 私、まだやり直せる?まだ間に合う?スカァトを握り締め立ち止まった。



私は、誰に死んでほしい?



「貴女の居場所は此処です。貴女は彼らを恨み憎み、ぼくに全てを委ねれば善いのです」





「Aちゃん?」



「ッいえ……早く帰りましょう(・・・・・・)、探偵社」



 フョードル様ごめんなさい、ごめんなさい。溢れる雫を拭い、警告のように鳴り響く甘い声にそっと蓋をして、足を進めた。探偵社(私の居場所)に帰る為に。





××






「随分変わったね」



 探偵社から寮に戻り、いつも通り向かい合って夕飯を食べていると、太宰さんは突然言った。何がですか、と問うと面白そうに口角を上げて頬杖をついた。



「今日、何かあったのかい?」



「だから銀行強盗に巻き込まれたんですって。会社で報告したじゃないですか」



「ごめ〜ん聞いてなかった!」



「本当に変わらないですね貴方は……あとご飯中に肘をつくのは行儀が悪いですよ」



「君は私のお母さんか何かかい?」



 国木田君に似てきたよね、と彼は口を尖らせる。その言葉、今日与謝野さんにも言われたような……絶対似てないと思うんだけど。



「変わったって、どこが変わったんですか?私。国木田さんに似てきたとか?」



「そんなんじゃないよ……気になる?」



 太宰さんは何処か悪戯っぽい笑みを浮かべた。その表情に吸い込まれるようにして、自分でも気がつかないうちに「気になります」と素直に答えた。

 

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作者名:ふわふわありす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/inotaku093312/  
作成日時:2023年11月16日 21時

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