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『 お前さァ〜、普段からこんなんしてんの?
もうすぐ退院出来るかもしれんのにこんなことすんなや 』
閉鎖病棟へ向かって全力疾走。
が、その途中、無念にも例の ‘ 永瀬さん ’に捕えられ、暴れ回る私は羽交い締めにされ、引き抜いた点滴は元の位置に大人しく刺さり、あんなにも整った顔を歪めた永瀬さんに説教されている。
私は簡素なパイプ椅子の上で姿勢を正し、しょんぼりした体で右から左へ受け流しているのだけど。
顔は未だ直視出来ないので、 視線を漆黒に艷めくの髪に移してみる。
窓から光が差し込んで、つるりと反射して輝き、天使の輪が出現してる。羨ましいなあ、私の髪はこんなにもボサボサなのに…
あ、枝毛だ。
『 話、聞いてへんやろ。』
枝毛発見機になりかけた私の手を掴んで、人間に戻してくれた永瀬さん。
視界にドアップの永瀬さん。さっきより歪めた顔、それなのにこんなにも美しい。
うっとりすることコンマ1秒。今置かれている状況はかなりまずいと、脳から司令が届き、
「 ひッ … !」
金属の軋む音と同時に鈍い音が響いた。
パイプ椅子から転げ落ちた…?しまった…。勢いよく顔を背けすぎたのか?痛〜。イタタタタ。頭打ったかも。
『 ハッハッハッハ 。何しとんねん、ホンマ 』
頭を抑えながら起き上がると降ってくる笑い声。
細めた目、綺麗に上がった口角、そこから 揃って並んだ真っ白な歯が顔を覗かせる。
この人笑うんだ。こんな風に笑うんだ。さっきまでの表情と一変して、急に幼くなった笑顔に、気づけば目を奪われていた。
『 頭 見してみ。』
聞き慣れない関西弁のイントネーションが、別の世界を浮遊していた意識を呼び戻す。
と、同時に痛みも蘇ってきた。痛いもんは痛い。大人しく頭を差し出す。
『どれ、あ〜、痛かったやろ。
とりあえず冷やしとき。ちょっとそこで待っといて。』
痛めた頭を冷やすための氷嚢を 取りに行ったであろう永瀬さん。ひとりパイプ椅子の上に取り残された私。
小さくなっていく背中を眺めながら、永瀬さんの笑顔が脳裏を掠めた。
徐々に顔が紅潮していくのを感じる。イケメンは苦手なはずなのに…。
「 ダメだダメだダメだ…!」
紅潮したはずの顔が一気に青ざめていく。顔が整っているからって騙されるものか。男なんて二度と信用するものか。
マイナスに働く思考を静止すべく、さっき床に打ち付けたばかりの頭をブンブンと横に振り、またしても私は駆け出していた。
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作者名:白 | 作成日時:2019年4月20日 12時