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story22 ページ22

「店長、今日はとても調子が良さそうだった。和くん、ありがとね」

病院からの帰り道、駅に向かう道中で2人並んで歩いていると、翔ちゃんが俺の方を向き、優しい笑みで言う。

「俺のおかげじゃないよ」

翔ちゃんが来てくれたからじゃないかな、って言う前に

「ううん、店長、和くんに会えて喜んでた」

翔ちゃん自身も嬉しそうに、一層柔らかく微笑んだ。

「…そっか、なら良かった」
「うん。だから…ね、和くん」


「そんなに思い詰めた顔、しないで?」


隣を歩いていた翔ちゃんが立ち止まり、困った様に曖昧な表情を浮かべた。

「…っ」

突然のことに驚き、声にならない声が漏れる。
ちょっとした心の雲が、顔に陰りを作っていたんだと気付かされた。

「そんなに変な顔してた?」
「変ってわけじゃないけど…いつも見てたから、すぐに分かるよ」

昔から隠し事をしていても、翔ちゃんがすぐに見抜いてしまうことをふと思い出した。
どうやらちっちゃい時から変わらず、何かあると顔に出てしまうらしい。

翔ちゃん以外に指摘されたことがなかったから、翔ちゃんの前でだけの癖なのかもしれないけど…なんて考えて、やっぱりこの人には敵わないんだと思い知らされた。

「そっか、流石翔ちゃん」
「ふふっ、何年一緒にいると思ってるの」

くすくすと笑い、再び歩き出した翔ちゃんが俺の隣へと舞い戻る。
横から見る翔ちゃんの瞳は、少し潤んでいた。

「…店長の言ったことは気にしないでね」

2人で並び再び歩き出しながら、静かに口にされた言葉にギョッとした。

その言葉が示すのは、あの話しかないと思ったから。

「…聞いてたの?」
「ううん、でも長く一緒に暮らしてた人だから、大体のことは分かるんだ」

あの時俺に買出しを頼んだ意味もね、と言いたげに俺の目を覗き込む翔ちゃんの瞳に映る自分を見つけ、一種の肯定をしてしまったことに気づいた時にはもう遅く、翔ちゃんはやっぱりね、と笑った。

「受け入れてくれただけでも嬉しいことだから。和くんが俺の過去まで全部抱えようとしなくて良いんだからね?」

またそういうことを言う。

笑顔でそう言うのに、どれだけ心を殺してるの?
なんでそう自分ばかり犠牲にしてしまうの?

もうやめようって話したばっかりだよ、翔ちゃん。

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作者名:ガナッシュ | 作成日時:2018年1月21日 1時

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