140: 幸せの朝 ページ40
朝起きると、隣でAが寝ていて「おはよう」って言ってくれる。
顔を洗っていると、ご飯の匂いがしてきて気分が上がる。
今日は、何かな？
胸を弾ませキッチンへ行くと君がいて。
隣でコーヒーを入れていると、ほんのりバターと卵の甘い香り。
んー………フレンチトーストだ。
横目で見ると、俺の名前を呼んで笑ってる君が微笑ましくて愛しくて。
ずっと笑ってるから「どうしたの？」って聞くと、「寝癖が可愛い」って笑いながら髪に触れる君の手がくすぐったくて気持ちいい。
あぁ………やっぱり夢じゃなかったんだな。
俺の記憶は戻ってる。
まだまだ先の長い道のりだって思ってたのに。拍子抜けしてしまう自分がいて。
でも、ものすごく嬉しくて…嬉しくて。
泪が出ちゃう……。
君と出会った時は、少し嫌々だった甘ったるいイチャつきも…
今では自分から甘えてる。
これってスゴイ事だよね。
俺って、こんなに甘えるタイプなんだって(笑)
お子ちゃまのように見えてたAも、今ではお母さんのように暖かい。
松本が見たら何て言うんだろ。
バカにされそうだな。
いいや。甘えてやるっ！
二人しかいないもの。
昨晩、『どうして、記憶が戻ったのか』君に聞いてみると……
『わからない』『気付いたら、玄関のドアの前に立ってた』と惚けてみせた。
ただ………
“ お母さんの香り ” がしたらしい。
そこだけ、ハッキリ覚えていると言うのだ。
ビックリした。
虫の知らせや亡くなった人が家族に会いに来るという事は、どこかで聞いたことはあったが………
本当にあるんだなって少し身震いした。
おばさん………Aに会いに来たのかな………？
おばさんが僕らを導いてくれたのだろうか。
みーちゃんの所なら分かるけど……
Aの所に来たんだ……
何故ここに？
翔ちゃんの研究や、みーちゃんが事故に遭った事知ってるのかな？
和也「………っ！？」
突然、顔に感触が襲ってきたので鳥肌が立った。
気が付くと…
心配そうに見つめるAの顔が、目の前にあった。
毛だった肌は治まり、一変して身体中心が強く脈打つ。
心が奪われる…というのは、まさに、こういう事なんだろう。
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作者名：さくらもち | 作成日時：2017年7月12日 17時
