111: 心の傷み ページ11
Aを見つめていると、目が合ってしまい、思わず…ドキッ………としてしまった。
じーっと、しばらく見つめ合っていると…
時より君の瞳に吸い込まれそうになる。
急に柔らかな笑顔で返してきたので、
また惹かれそうになる。
A「あ、あなたは…………確か “ 二宮さん ” でしたよね？」
和也「………あ、はい。そうです。」
二宮…… “ さん ” ………か。
聞き慣れない呼び方に心が締め付けられる。
思わず俺は、よそよそしい態度をとってしまった……
そうだよな。
彼女には俺の記憶がない。
弁当作ってもらって。
可能性があるかもって。
浮かれてたんだな……俺は。
心のどこかで分かってたんだ。
でも、夢見たっていいじゃないの。
今の俺は、そう思ってないと押しつぶれそうなんだ。
少しでも可能性を信じないと……
じゃないと消えてなくなってしまう。
あぁ………呼吸って、こんなに上手く出来ないもんだっけ？
今日、こんなに寒かったっけ？
暖かい季節なのに……
やけに視界が薄れていく………
あ…………やばい。
A「大丈夫ですか？」
その敬語…………気持ち悪い。
和也「ごめん………。昨日の弁当ありがとう。美味しかったよ。」
俺は、意識が混乱する中、彼女の胸元に弁当箱を押し当てた。
A「え？はい。…………どうも」
和也「それじゃ、俺帰るよ。」
潤「は？」
俺は、その場から逃げるように家から出ていった……
自分でも、何で逃げたのか分からない。
多分、記憶が無いという現実が受け入れられなかったんだと思う。
マンションの入り口から走り出ると
外は、今の俺の気持ちを表すかのように雨が降りしきっていた。
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作者名：さくらもち | 作成日時：2017年7月12日 17時
