午前5時 ページ20
ガラリ。
小さく襖の開かれた音で、不意に目が覚めた。
その音は私の部屋の襖ではなく、どうやら隣かその近くらしい。
時刻はまだ午前５時。
真選組屯所内はシンと静まり返っている中、ストンストンと規律の良い足音が私の部屋の前を通り過ぎて行った。
興味本位で音を立てないように襖を開いて廊下を覗くと、ちょうど廊下の角を曲がるのが見えた栗色の髪。
「・・トイレって逆だったよね」
ぐっすり眠っていた筈なのに、一度起き上がってしまったが故にもう一度眠るにはあまりにも目が冴えすぎて。
そんなことよりも沖田さんがこんなに朝早くに向かった先が気になって、こっそりと後をつけてみる事にしたのだ。
・・こそこそついていく背徳感はあるんだけどね。
スタスタと行ってしまう沖田さんの後をそっとついていけば、沖田さんはそんな私に気付く様子もなく目的地であろう場所に迷いなく入っていった。
「・・道場？」
「いつも稽古場で朝イチ練習してんのはアイツだ」
「ヒッ、ヒェッ」
突然後ろから投げかけられた声に、思わず情けない声を出せば、土方さんは私の声を鼻で笑った。
まだ太陽が昇りきらない薄暗い中、竹刀が風を斬る音だけが道場には響いていた。
道場につるされた小さな明かりが、時たま沖田さんの額の汗をキラリと映し出す。
「なんか、意外、ですね」
竹刀を振る沖田さんの表情は真剣そのもので。
私の中でサボり魔だったイメージの沖田さんはガラガラと崩れていく。
鮮やかな剣筋は、素人の私が見ても見惚れるくらいに美しかった。
「アイツがただ己のセンスだけでここまで戦い抜いて来たわけじゃねェ」
――他人から見えないところで軒並みならぬ努力をしてンだ。
かっこつけやがって、と笑った土方さんはそのままくるりと踵を返して行ってしまい、道場の前にポツンと残された私は――・・
「――・・何ンなとこでこそこそ見てンでィ」
がらりと大きく開かれた扉から、ツンとした顔の沖田さんとばっちり目が合ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 713人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
微糖。 - 面白いです。続き待ってます。 (2020年5月31日 20時) (
レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 今までで1番好きな物語です！更新楽しみにしています。 (2020年3月29日 11時) (レス) id: cd8046c6bb (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - ソマリさん» ありがとうございます。これからもよろしくお願いします (2020年2月16日 22時) (レス) id: 9618de47fb (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - 淋さん» ありがとうございます。楽しんでいただけているようでうれしいです (2020年2月16日 22時) (レス) id: 9618de47fb (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - モンスターエナジー愛好家さん» 更新長らくお待たせしました。ありがとうございます (2020年2月16日 22時) (レス) id: 9618de47fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神阿 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kamiamatome/
作成日時：2017年11月23日 21時
