５４ ページ4
.
ん？あれちょっと待って。
「トントンって私の写真たくさん持ってたよね？」
自分の写真は消させて私の写真は腐るほど持ってるって不公平だよね？私だってトントンの写真の1枚や2枚思い出として持っててもいいじゃない。
私のジトリとした視線から何が言いたいのかすぐに分かったらしく、真っ向から受け止めたトントンは腕組み仁王立ちで堂々と頷いて見せた。
「持ってますけどなんすか。嫉妬してくれるんすか」
「嫉妬はしないけど…」
そもそも写真に嫉妬する方が稀有なんだよ。だいたいの人は写真の数で愛情を測ったり相手に自分の写真を持ってて欲しいと思うんじゃないだろうか。実際私も嫌ではないし、まぁ、ちょっと嬉しかったりするし。
「なんかズルイじゃん。私だって消したくなかったのに」
「俺が写真持ってるの嫌なん？嫌なら俺も」
「嫌じゃないけど…もう！その聞き方は卑怯だよ！私だってトントンの写真持ってたいってこと！」
「それ以上可愛ええこと言ったらアカンっ！！！」
目をぐわっと開いた頑固親父のごとき叱りつけに怯んだ。セリフは親バカのくせに迫力だけで押し切られてしまったみたいで悔しい。ここで折れたら私は一生トントンの写真を持てない。どうにか、どうにか彼と妥協案を結べないものか。
「あっそうだトントン。一緒に写ろ？ツーショットならいいんじゃない？」
「それ両手に花やんけ。2人のAに囲まれるなんて羨ましくて血反吐でるわ」
そそくさと隣に移動してカメラを構えたのにしゃがみもしないこの男。身長差があるから屈むか台に乗るか真下から撮らないと同じフレームに写れないとわかってて非協力的なこの態度。
「…もういいトントンの足撮るから」
ついでに手も撮ってやる。パーツごと撮ってくっつけて合成してキメラトントン作る。
「あの…」
黙々と撮っていたらへにょりと眉を下げたトントンの顔に行き着いた。
「無言で全身舐めるように撮ってくのやめてもろて…」
拗ねた私をどうするか考えてる顔。むくれたまま撮っていい？と聞くとなんと弱弱しく頷いたのだ。
「変顔するわ…」
「…別にいいけど…私が好きなのは写真のトントンじゃないし」
「え、それ」
どういう。
私からポロリと落ちた言葉を彼が拾った。
フレームに映した顔がぶわっと鮮やかな赤へ染まっていく。私も動揺から咄嗟にボタンを押した一瞬。画面越しに移った熱はそのままに、蹲る彼を追撃で写真に収めてやったのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 519人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
輪廻(プロフ) - うわぁめちゃくちゃ面白いです！！！！ (2021年10月30日 2時) (
レス) @page23 id: dceee3a757 (このIDを非表示/違反報告)
あまぎ(プロフ) - ひなひなさん» あぁぁぁありがとうございますー！！！話数が急に若返りましたね…すいません助かります。しかも褒めて頂いている…！願ったり叶ったりみたいな気持ちです！また何か訂正箇所があったら教えてください！ (2021年4月23日 20時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
ひなひな(プロフ) - 64話が14話になってますよ(ﾎﾞｿｯ)とても面白いです！凄く面白いです！物凄く面白いでs(( (2021年4月23日 18時) (レス) id: a43ccc94fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あまぎ | 作成日時：2021年1月30日 17時
