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やけに長い時間ゲームに興じていたようで、でも実際は30分も経っていないと思う。
5本目のパッキーがトントンの喉を通り過ぎていくのをクラクラと眺めていると深紅に沈んでいた彼の瞳に光が宿った気がした。直後、ぐっと後頭部を引き寄せられ額にトントンの肩が当たった。
まるで私から顔を隠すような仕草。するとすぐに、はぁーっと肺と言わず体中の二酸化炭素を吐き出すような、体格のいい彼に似つかわしい大音量の深呼吸が聞こえて一気に脱力したようだった。
「気が済んだ…?」
「……………すまんかった」
神妙に、心底申し訳なさそうに反省の弁を述べていくトントン。一瞬なにに対して謝っているのか分からなかったけど、半ば無理やりパッキーゲームを始めて私を好き勝手したことを謝罪しているようだった。
「頭ん中それでいっぱいになって、ワンチャン…ゲームできたらとか…思ってしまいました…」
呆れられたら、嫌われたらどうしようという彼の不安が声と手から伝わってくる。本当にこっちの都合も考えず自分勝手に強気で来るくせに、こういうときはしおらしくなってズルいというかしょうがない人だ。
「謝る必要なんてないよ」
この状況、このパッキーゲームを嫌だと振り払わず受け入れたのは間違いなく私の本心からだ。そうでなければソファに大人しく座らないし膝にも乗らない。パッキーを咥えた直後に自分で食べてるし暴れてる。
非など端から存在しないものに怯えて私から隠れるように縮こまる姿はまぁ、可愛くもあるけど。
「すまん…」
「そんなことよりトントン。このパッキーゲームって私の5連勝でいいんだよね?」
「そう、やな」
肩から半ば強引に離れると驚くような表情が見えた。いまだトントンの膝の上に乗りながら得意げに笑うとヘニャりと眉が緩まって、お願いごとあるなら聞くわと返された。
「そうだね。敗者にはそれ相応の罰を与えねばならない」
「なんやその言い方グルさんみたいで嫌やわ…でもAが偉そうに喋るのはなんかこう、クるもんがあるなぁ」
「そうやって余裕があるのも今のうちだからね!」
「せやなぁ楽しみにしとくな。勝者のA様は残ってるパッキー喰われます?」
敬ってるようで全然聞いてないねこの人。まだパッキーが10本以上入っている袋ごと渡されて大人しくポリポリと食べていく。罰ゲームは何がいいんだろうなんて思いながら、彼はそんな私をだらしなく見つめながら。
何か面白い罰ゲームないかなぁ。
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あまぎ(プロフ) - linkeaさん» 心に染みるコメントありがとうございます!tン氏の妥協の産物ロボピッピですが自分で想像して可愛いと悶えたりもしました。彼には是非あざと可愛い行動をして欲しい…!こちらこそ楽しく読んで頂けるのめちゃめちゃ嬉しいです!今後ともよろしくお願いします! (2021年2月21日 16時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
linkea(プロフ) - 楽しく読ませてもらってます!!19話目のピッピの流れめっちゃ好きです笑 こんなにも面白い話ありがとうございます! (2021年2月20日 12時) (レス) id: b1d2253538 (このIDを非表示/違反報告)
あまぎ(プロフ) - ゆりおとめさん» そこに触っていただけるとは!ナカーマです!自分からは好きな人に好意を持って接すれるのに好意を持った相手から好意を向けられると嬉し恥ずかしになってしまう、そんなトnさんを推したくて書いてるので反応頂けて嬉しかったですー!コメントありがとうございました! (2020年10月2日 19時) (レス) id: 975a9486c5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりおとめ(プロフ) - 10話の「自分からは行けるけど、夢主から来られると挙動がバグるtn」にmoeました。 (2020年9月30日 22時) (レス) id: 01e13c464f (このIDを非表示/違反報告)
ゆりおとめ(プロフ) - 好きです (2020年9月30日 22時) (レス) id: 01e13c464f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまぎ x他1人 | 作成日時:2020年1月9日 18時