【d!】幼馴染は紳士の皮を被ったなんぞや？(ﾄ/n)

２９ ページ29

.


しかし、魚を釣るにしても釣り場がなければ餌の撒きようがない。それはどうするんだろうと適当なポーズを取りながらトントンに聞けば、任せときと画面から目を離さないまま自信満々に言ってのけた。


「類は友を呼ぶ。知り合いにそういった裏事情に詳しい奴がおんねん」


いまのトントンがそれを言うと完全にブーメランで類友なわけだけどその伝手は頼らざるをおえない。




そういうわけで、昨晩の撮影会からずっと笑顔で画面スクロールする類友が家に連れて来たのは


「ほんま噂通り可愛らしいお嬢さんですやん！あっどうもウツですーお邪魔しますぅー！」


怪しいセールスマンみたいな人でした。
胸ポケットから名刺取り出してきそうなこの人が学校の裏事情に詳しい人物らしい。挨拶を返そうとしたら目の前が真っ暗になった。


「あかん。それ以上見たらヤバイ菌移される」

「なんやチューしたっても、あ、嘘ですすいません。勘違いせんといてなAちゃん。俺は健全やから、全然ばっちくないからな？」

「よぉ言うたなお前」


慣れた様子で掛け合う2人がソファに座る。私が上着をハンガーにかけていると、ウツさんにそっと茶封筒が差し出された。


「マジで不本意やけど」


心底嫌な顔をしたトントンに笑い、中から数枚の写真を取り出したウツさんが一枚一枚丹念に目を通していく。当然それは昨晩撮った写真なんだけど、そんな真顔で検分されると被写体である私は恥ずかしくて居てもたってもいられない。


「う…ウツさん、具体的にどうやって盗撮犯を捕まえるんですか？」

「ああいう奴らには商売ルートと仲間内の合図があってな、それを利用するんやけど…なあ、ひとつええ？」

「なんや」


まるで闇取引か商談のような雰囲気の中、ウツさんが写真を机に並べだした。


「なんで全部にゾムさんのオホーが描かれてん」

「あ？なんで綺麗な写真を盗撮犯みたいなクソクソのクソにやらなあかんねんって思って編集したに決まってるやろ」


言われて写真を見ると、確かにえろ目のクラゲ？が吹き出し付きでオホーと奇声を発している。全然ゾムさんのイメージじゃない。本人の印象からかけ離れたおちゃらけ具合で物凄く目を惹くんだけど。


「えー、もうめっちゃ気になるけどええかぁ」


加工無しの写真は望めないと判断し、写真を封筒にしまい終えたウツさんがさぁと気合一発、小さく手を叩いた。


「グルちゃんに絶対解決しろって言われちゃったからさ。みんな頑張ろな」


.

３０→←２８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す