青春２８.平和な世界だ… ページ30
まだ少しだけクラクラする頭を抑えながら浜辺に出る。
ちゃんと浮き輪は手に持ってるし、ビーチボール(？)も太宰先輩が回収している。
「悪い、A！頭、痛いのか？」
「いえ、少し目眩がする程度なので大丈夫です…」
私が頭を抱えているせいか、中原先輩は心配そうに見つめてきた。
「マジで悪かった。手前に当てる心算は無かったんだけどよ…太宰の野郎が避けやがって…！」
「ほ、本当に大丈夫ですから！」
メラメラと炎が見える…熱い熱い。
「全く…女の子に当てるなんて酷いじゃないか。君のゴリラ並の力で飛ばされたものは、例えビーチボールでもプラスチックとなるのだよ？」
「だぁから！手前が避けなきゃ良かったんだろうが！！」
再び喧嘩を始めた２人の横を通り抜け、坂口先生が近づいてきた。
「多華さん、目眩だけで済んで良かったですね」
「あはは、そうですね…」
「僕は君が海に沈んだ時、頭蓋骨にヒビでも入ったのかと思いましたよ」
「そのくらいの威力は出るってことですか…？」
いやいや、そうなれば中原先輩は人外だよ。
「冗談ですよ」と微笑まれ、胸を撫で下ろすのと同時にキュンっとなった。
いや、教師相手に駄目だろう。これは。
「多華は1人で来たのか？」
織田先生は、太宰先輩が避けた中原先輩の攻撃を軽くかわしてこちらへ歩み寄って来た。
「いえ、福沢さんと乱歩先輩も居ます」
「そうなのか？その割には見当たらないが…」
「海の家でくつろいでいるんですよ」
そう云うと、織田先生は海の家へ顔を向けた。
「確かに居るな。いや、それなら良かった」
「え、どういう事です？」
「女子1人でこのような群れへ来るのは危険だろう。
織田先生はその事を云っているのだ」
今度は龍之介君が会話に入ってきた。
それも、太宰先輩にぶつかられて、嬉しそうに「大丈夫です」と云った後に。
「な、成程…でも、私はナンパされる心配なんて……」
「そういう思考がいけないんですよ。世の中、何が起こるか判らないんですから」
「で、ですね…済いません」
こうやって会話が交わされている間、2人はずっと喧嘩している。
それを必死に止めようとしているのは敦君だけだった。
「ちょ…だ、誰か！手伝ってくださいよ！！」
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作者名：入浴 | 作成日時：2018年3月12日 23時
