【BTS】シュガーシガーキス

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玄関で鍵の音がして、「あ、」と思わず声が出る。


「おかえりなさーい」



出迎えれば、靴を脱いでいたユンギさんが静かに驚きながらわたしを見る。

「は、なんで、……あぁ」



少しだけ緩んだ頰をわたしは見逃さなかった。

「来たの」
「迷惑じゃ無いかなって思ったけどちゃんと嬉しそうな反応だったのでよかったです」
「うるせぇな笑」
「ご飯作ってます」
「あー、さんきゅ」


リビングに入ってもぽつりぽつりと会話を交わす。



……毎週土曜日だけだった筈のこれ。

けどもう少ししたら、週一回でも。会えなくなってしまう。





＊


「もうどこ借りるか決めた？」


おかずに手を伸ばしながら、ノールックで聞かれる。


「ううん、ネットで内見するのが楽だけどやっぱり実際行かないと不安だから今週末くらいに」
「それがいいわ」



少しずつ。進めている引越しの準備はまるでユンギさんから離れる為の準備の様にも感じた。
なんだろう、普段はポジティブなのに、今のわたしはすごく、嫌だ。




「なんか今日変だな」

口にいっぱいに頬張る癖のあるユンギさんがわたしをちらりと見て。言う。



「何か不安か？」

本当にこの人は。
なにも言わなくてもわたしの言わんとする雰囲気を察してしまうから恐ろしい。


「大丈夫。なにも変わんねえよ」
「……本当ですか」




変わらない。
そうユンギさんが言ってくれるだけで少しだけ心は救われるのに。

それでもまだ。安心しきれていないわたしがいる。



「我慢出来なくなったら有給でもなんでもとって会いに行くし、来たくなったら返ってくりゃいい。交通費くらい持つ」
「……いらなく、ならないですか」
「は？」
「わたしの事。会わなかったらその分もういいや、ってなんないですか」
「なんねえ」

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