お見舞い。 ページ5
病室に向かうと、中には要君の姿が見える。
「あ!翼。千華ちゃん。来てくれたんだ、ありがとう」
そう言って要君は起き上がる。
体調は落ち着いているらしくて、前にお見舞いに行った時より顔色は良くなったように見える。
「要君、はい」
途中で摘んできた野花を渡すと要君は嬉しそうに笑う。
「要、ほらよ」
そう言って翼の制服の中から姿を現したのは北の森で確保してきたベア。
「ベア!久しぶり、元気にしてたかい?」
一目散に要君の懐に飛びつくベアにくすぐったそうにしながら笑う要君。
その光景を見て、翼の方を見ると目が合う。
うまくいったな。と言うように笑う翼に釣られて私の顔も緩む。
要君が病院内にあるカフェのケーキが美味しいと言うのを聞いて、
私と翼で買いに行くことになった。
カフェに並ぶケーキは確かにどれも美味しそうに見える。
「千華は、プリンでいいか?」
「うん」
ただ、甘いものは苦手だからいつも見て満足するだけ。
お祝いごとの時は大体プリンを用意してもらう。
そのことを知っている翼は既にプリンを1個お盆に乗せていた。
「要君、次はいつ学校に行けるようになるんだろうね」
「あの感じじゃ近いうちには出れるんじゃねーか?」
本当に調子良かったみたいだし、と言って会計を済ませる翼はなんだか嬉しそうだった。
病室に戻ると、要君はベアと楽しそうに話していた。
「要ー、買ってきたぞ」
さっき買ってきたケーキを机の前に置く。
私はプリン、要君はあっさりめのフルーツケーキ、翼はチョコケーキとモンブランを。
ベアが淹れてくれたお茶を飲みながら何気ない会話をしていると、時間はすぐに過ぎる。
「便所行ってくるわ」
といって翼が出ていくのを2人と1匹で見送る。
「そういえば、千華ちゃん。体調は大丈夫?」
お茶を飲みながら、要君は突然そんな事を聞いてきた。
ベアも動きを止めて私を見つめてくる。
「…体調って?」
「誤魔化したってダメだよ。千華ちゃんのアリスも僕と同じなんだから。
それに先月、病院に来てたでしょ?検査で廊下にいた時見かけたよ。
…翼も気にしてたみたいだし」
「声かけてくれたらよかったのに」
「すぐ呼ばれちゃったから…」
「それで、体調は大丈夫?」と要君が聞く前に翼が戻ってきてそのまま今日は帰ることになった。
「…2人ともありがとう、ベアもまたね」
ベアは名残惜しそうだったけど、今度また連れて行く約束をすると渋々だけど翼の懐に隠れた。
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作者名：臨楽 | 作成日時：2020年11月6日 0時
