嘘つきは死んでも治らない ページ5
おれは生前、武士の家に生まれた。兄は七人いた。おれはというと、一番下の八男として生を賜った。七人の兄は体が丈夫で、頭も良く、賢くて、凛々しくて、武術にとても優れていた。
けれど、おれは、おれだけは、体が弱くて、武術も上手くなかった。相手を傷つけたくはないし、勝負をした時、もし、おれが勝って相手が負けてしまったら、相手はきっと傷ついてしまう。
だから、おれは、武道の時間が一番嫌いだった。
そりゃ、武士の家に生まれたのに、男として生まれたのに、武術が出来ないなんてそんなのは、論外だけれど。
痛いのは嫌だし、傷つけるのはもっと嫌だった。
それを見かねた母はある日、おれを呼び出して言った。
「貴方はいつかこの家から出ていくでしょう。その時、きっと貴方は一人では生きていけない。だから、笑いなさい。どんなに、罵られようと、虐げられようと、笑うことをやめてはなりません。」
どうしてかな、随分と昔のことなのに未だに鮮明に覚えている母の言葉。
そして今も忠実に守っいるっていうのは、いかがなものだろう？
母親の言葉の呪縛、何百年生きたって、ソレから開放されることはないみたいだ。
× × × ×
『木舌？』
任務先へと空間を繋げる最中に、いつものヘラヘラした締りのない顔が、真顔だったのでAは彼に声をかける。
木舌は、Aの呼びかけにハッとし、慌てて顔を上げた。
｢え？なに？｣
『任務先につくけど…、どうかした？考え事？』
｢ん、そんな感じ。ちょっと酔っ払ってるから不安だなぁ、大丈夫かなぁ…｣
ははは、と不自然に笑う木舌にAは眉を潜めた。
『今回の任務、やりずらいなら帰っていいよ』
Aは仕込み刀を木舌に向ける。
『木舌がやりたくないこと、無理にさせるのは良くない。……それと、木舌はお兄ちゃんだけど、心配させまいとして、無理して笑う事はないと思う。』
「……そっか、ありがとう。おれは大丈夫だよ(違うんだ、おれが笑うのは心配かけまいとして笑っているんじゃない。家族に、お前達に×××たくないから)」
舌は今日も今日とて、嘘をつく
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匿名(プロフ) - 傘雨さん» やはり、あのお話を書いたお方様でしたか…。匿名のコメント欄にコメントいただきまして、たいへん嬉しく思います。いえいえ、拙い文章構成でワタクシなんぞ皆様の足元にもおよびません！傘雨様のお口から面白いなど、天にも登る気持ちで噛み締めていきたいと思います。 (2016年8月13日 18時) (
レス) id: cce638f287 (このIDを非表示/違反報告)
傘雨(プロフ) - 匿名さん» 素敵かどうかはわかりませんがクロスオーバーは書いております。前々から匿名様の作品は面白いものが多くて、とても気になっていました。毎回勉強になります！ (2016年8月13日 16時) (レス) id: 54a0c9d2e1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 傘雨さん» コメントありがとうございます！傘雨様が楽しくお話を読んでいただけて何よりでございます。失礼ながらもしや、獄都事変と夏目友人帳のクロスオーバーの素敵なお話を書かれていらっしゃるお方では…？ (2016年8月13日 15時) (レス) id: cce638f287 (このIDを非表示/違反報告)
傘雨(プロフ) - 夫に捨てられ愛するはずだった娘を憎んでしまった母の心境とか、泣かない子供の描写の切なさとかすごく良かったです。とっても楽しく拝読させていただきました (2016年8月13日 1時) (レス) id: 54a0c9d2e1 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 幽さん» あやこさんはきっと、お留守だったんですね、（本音:キリカさんしか頭になかった！） (2016年6月9日 20時) (レス) id: cce638f287 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名 | 作成日時：2016年5月1日 13時
