寂しがりやに欲しがりや【櫻井百瀬】 (ページ13)

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笑顔と涙ページ13

もう4月とはいえど外はまだ肌寒い。
既に暗くなりつつある空を見て顔を顰めた。

こんな中大切な子を一時間以上待たせてるんだから自分に腹が立つ。

久しぶりに君の泣いた声を聞いてあの時はどういえばいいのか分からなかった。我慢強くて、変なところで強がりな君が俺のために泣いてくれてて声を枯らせてた。

「(これ以上待たせちゃうのは本当はやなんだけど。それ以上に今君に顔を合わせて謝りたいって気持ちの方が強いと思う)」

ごめんね、自分勝手な男でさ。
でも君を泣かせた悪い男が通話で謝るだけで許されるわけないじゃない。君をめいいっぱいお姫様みたいに甘やかして、笑わせてあげないと俺は気が済まないよ。

「おまたせ、Aちゃん」
「あ、モモく…ぁちょっと待ってまだ涙止まってな＿＿」
「いいよ、全部流しちゃいなさい。君は色々溜め込んじゃうからね、はい、いい子いい子」

ハンカチに隠れた瞳がちらりとだけ見える。うさぎの目みたいに真っ赤で目元も腫れてる。ごめんね、こんなに目が真っ赤になるまで泣かせちゃって。
君の笑った顔が好きだと言ったのに目の前で泣いてる子を泣かせたのはそんな自分だ。だけど俺の事で目が腫れ声も枯れちゃうほど泣いてくれたって考えちゃうとどうにも悪い気がしなくもない。

そんな事を思っちゃう悪い男に大人しく撫でられる彼女は大量の雫を目元いっぱいに溜めた。

「ごめんね、泣いちゃうくらい不安にさせて」
「……モモ、くん。ほんと、私をこんなふうに泣かせるの、あなたくらいですよ…っ…」
「はは、手厳しいな。でも俺、君の笑顔も大好きだけど俺の事で泣いちゃう君も悪くないかな～って」

頭を撫でていた手を柔らかそうな頬にずらす。
撫でてみると彼女の涙で手に水気がつく。彼女は涙を流したまま困ったように微笑んだ。

「モモくんに好意を持たれるなら、なんでもいいかも」

「え、今なんか言った？」

彼女の小さな声は気まぐれに吹いた風に飛ばされてしまう。
君はその後なんでもないよ、と答えた。