外伝:いいところに ページ39
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「ちょっと休憩する?」
「ああ」
窓から入り込む夕日があまりにも眩しくて集中が途切れてしまった。
空になっていたコップを持って一階に下りると丁度お母さんが饅頭を食べていて、「持っていきな」という言葉に甘えて2つポケットに入れてまた部屋に戻った。
「凛くんお待たせー」
「ん」
凛くんは背もたれのベッドに上半身を広げて天井に顔を向けながら目を瞑っていた。
少しの悪戯心でそっと近づくと、凛くんの前に仁王立ちして左頬にちゅっとキスしてみた。
「……あ?」
「っひ、怖い! 彼女に向ける顔じゃない!」
見開かれた瞳は据わっていた。
私の方が見下ろしている立場なのに、私を睨み上げる凛くんは影になって一層怖い。
上から退こうとした時強い力で腰を引き寄せられてそのままへたりと凛くんのお腹の上に座り込む。
「何でここなんだよ」
「いや、悪戯で…」
「ぬりぃ悪戯だな」
「え、ちょ凛く、んぅ」
首を掴まれて、強く唇を噛まれる。
呼吸を奪うように押し付けられて成す術もなく凛くんのブレザーに皴をつけてしまう。
「お家では指一本も触れないって約束だったじゃん…!」
「お前が先に破った」
「私は家主だし!」
「あ? 苦しい言い訳すんなタコ」
「ちょストップすと」
絶対に止まる気の無い勢いで凛くんにまたキスされる。
啄む様に何度も落とされて、その度に漏れる私の息で凛くんは口角を上げた。
腰を持ち上げられて視界が反転する。
ベッドに凭れ掛かっていた筈の凛くんは私を組み敷いて、逆に私はシーツに沈み込む。
「どこまでならセーフだ?」
「こ、小指だけならセーフ…!」
「言ったな?」
長い小指が私のシャツのボタンに引っ掛けられて、ぐいっと上に引っ張り上げられる。
その拍子でスカートからシャツが出て喉が鳴った。
制止も聞かず、シャツの中に熱い手が入り込む。
そしてその小指がキャミソールの紐を肩まで下ろした時――…。
「Aー凛くん、夕飯なんだけど――」
咄嗟に彼を突き飛ばして、凛くんはうつ伏せに平伏した。
お母さんが扉を開けて、距離を置いた私達を交互に見て首を傾げる。
「どうしたの、そんなに汗かいて」
「筋トレしてて!」
「面白い事するわねー」
かくして凛くんとの攻防戦は免れたけれど、まさか小指一本であれだけ出来ると思わなかった。
未だうつ伏せで私を睨む凛くんと二人、大きく安堵の息を吐いた。
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おそらまめ(プロフ) - 彩華さん» 彩華様、感想長らく気づかず遅くなり申し訳ありません。ありがとうございます。きっと二人、これからも沢山言い合いして、言葉にならない愛を育んで、お互いが明日を生きる理由がお互いになっていくんだと思っています。また機会があればどこかでお会いしましょう! (7月21日 13時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 完結から時間経っているとはわかっているんですけど、これだけは言わせてください。めっちゃ好きです!夢主ちゃんも凛君も末長く幸せになって!これからも他の小説での交信頑張ってください。応援しています。 (7月11日 0時) (レス) @page45 id: 2b870d0ab1 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - mooさん» moo様、コメントありがとうございます!原作で摂取できない分滅茶苦茶に砂糖煮詰めております(^^)楽しんで頂けたようで何よりです。ご覧頂きありがとうございます。 (6月1日 18時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 糖分過多ー!!面白かったです! (6月1日 3時) (レス) @page45 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ルアさん» ルア様、コメントありがとうございます!大切に作ったので、そう言って頂けて作品も作者同様喜んでおります。こちらこそ、作品を応援して頂きありがとうございます! (2023年4月19日 14時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2023年3月27日 18時