27【あおいめ】 ページ29
治は無表情に語り出した。
時代にして江戸の末の事である。
稲荷崎の村で、青い目の子供が生まれた。現代の知識からすれば、それは異常などではなく普通に起こり得る事である。しかし当時はそれが受け入れられなかった。医学的な知識も、偏見を捨て去るための知識も当時は無かったのである。
女は夫ではない男と、しかも妖怪変化とでも不貞を働いたのではないかと詰られ、子を取り上げられた。その子は家の者の手で弑され、女は座敷牢に閉じ込められた。
「……その末の、身投げってことか……」
「おん。人間はホンマにバカやからな、正真正銘女と夫の間の子やっちゅーのに殺してもうたんや。そら怨念はすさまじかったで……あの北さんですら困ってはった」
「……いやちょっと待って、」
北さんって何歳?と口にしようとした私の右手首をぐるりと黒髪が絡め捕る。ア、と呟いた次の瞬間には体が宙を舞っていた。
「サクサ!」
「わわわわわわわ!!」
ポーン!と放り投げられた体、スパイカーの手に何してくれとんじゃい!
背中から天井に強くぶつかって、そのまま落下する。ゲッ、と変な声を出しながらもなんとか地面を転がって立ち上がる。しかし治と分断されてしまった。
私は天井を見上げる。
……治が呪霊(怨霊)を相手取っている間に、私があの上の方までよじ登って、侑に呪力を分けるのが最適解だろう。
呪霊の向こうで跳ね回りながら髪の毛を引きちぎっている治を見てうん、と頷く。
そうと決まれば善は急げ。おみくんより昔から木登りはウマかったんだから、多分大丈夫。
「待ってなさいよ、侑……!」
私はぺっぺ、と手に唾を吹きかけて、凹凸のある壁面にしがみついた。
〇
さて、こちらは井戸の傍でトラロープの端を手に立っている角名である。
同級生と狐が古井戸の中に飛び込んでいって早10分。音沙汰が無いと不安になるが、不思議と「まぁ大丈夫だろ」といった感情の方が大きかった。
スマホ片手にぼんやりしていると、来た道の方がぼんやり明るい。誰か戻ってきてしまったのだろうか、と目を細めて顔を上げる。
「こんな時間に、こないな所におったら危ないで」
ぼうっと光っているのは赤い提灯。稲荷崎、と記されたそれを片手に現れたのは紫の袴を履いた男であった。狐のような目がちろりと光って見えて「あ、もしかして」と角名は佐久早に聞いていた話を思い出す。
「アンタは」
「稲荷崎神社の、神職や」
【あおいめ】
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藤浪(プロフ) - merisuさん» 初めまして!とても面白いだなんて……ありがとうございます!ぼちぼち書いていきますので、どうぞのんびり更新をお待ちください……! (2021年8月20日 20時) (レス) id: a6c7f148a0 (このIDを非表示/違反報告)
バボ - はじめまして!!一気読みしました!!いやぁ、侑君と治君めちゃくちゃかっこいいし、可愛いですね!とても面白かったです!!続き待ってます。頑張ってください! (2021年8月19日 22時) (レス) id: f5aeefa10b (このIDを非表示/違反報告)
merisu(プロフ) - はじめまして。とても面白い作品をありがとうございます!!続きを楽しみに待っています(^^)更新頑張ってください!! (2021年8月19日 19時) (レス) id: bbb64c35b8 (このIDを非表示/違反報告)
藤浪(プロフ) - mioさん» はじめまして!嬉しいお言葉、ありがとうございます。もふもふいいですよね、もふもふ……。聖臣くんを書くのもとても楽しみなので、のんびりご覧いただければ幸いです!! (2021年8月8日 6時) (レス) id: 0698c9c155 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 初めまして。とても面白かったです!もふもふ触りたい……。聖臣くん登場するのも楽しみにしております (2021年8月6日 20時) (レス) id: e44c41366c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤浪 | 作成日時:2021年4月28日 22時