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雨が少し弱まったのか、再びしとしとと優しい音になった。

私は、兄様が刀の手入れの手を止めてまで話を聞いてくださるとは思っていなかったので、内心驚いている。

じっと私の目を見つめ、時折思い出す様にして、日輪刀を見たり、自らの掌を見たりしながら、静かに聞いておられた。

私が話を終えると、深く溜息をついて、遠くを見る様な目でこう仰った。

「………そんな事も、あったな」

兄様は、いつか私に、自分は全てを捨て去ってきてしまったのだ、と仰っていた事があった。

勿論、兄様の全てを知らない私には、一体それが何の事であるのやらさっぱりわからない。

けれど、昔のように明るい笑顔が見られる事はない。

私も、随分といろんなものを置いてきてしまった様な気がする。

この思い出話は、兄様にとって、一体どのように記憶されているのだろうか。

そして、縁壱兄上はどうだろう。
そもそも、この事を覚えておられるだろうか……?



「只今戻りました」

「兄上! おかえりなさいませ! ……先程、兄様と懐かしい話をしていたところなのですよ」

「そうなのか? ……兄上、只今」

「あぁ、おかえり」

兄上が、雨に少し濡れた髪を気にする事なく上がってこられた。

「おい、縁壱。少しは髪を乾かさぬか」

「………すみません、兄上」

私が渡した布を受け取り、ひとつに結んである髪を持ち上げるようにして水気をとっていた。

……こうして見ていると、兄上は大人となった今でもあまり変わっておらず、少し幼く見える事があった。

話をする時は非の打ちどころのない人格者であったが、こんな風に、私達きょうだいだけの時は特に、昔の姿を思い浮かばせる様な雰囲気がある。

兄様はその事に、少し戸惑っておられた。

抱擁*1→←雨宿り



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藤葛(プロフ) - レモンティーさん» ありがとうございます! 自粛開けもちまちまと更新していきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします(*^^*) (2020年5月30日 21時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - この作品大好きです!!なんせ緑壱さんが推しなもので…(´∀`*)更新頑張って下さい!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 0820e3db89 (このIDを非表示/違反報告)
藤葛(プロフ) - 澪さん» わああ……ありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです!!とても励みになります……頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!! (2020年5月20日 7時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
- すごく好きです継国兄弟…こういう設定のもの大好きです…いいものを見させていただきました…ありがとうございます…!!頑張ってください!応援してます! (2020年5月20日 3時) (レス) id: c921836d0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年5月17日 4時

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