いもうと*巌勝side ページ35
最近、縁壱の様子が変だと私は思う。
Aの才能が開花してからというもの、彼奴のAに対する態度が大きく変化したように感じるのだ。
やけに執着しているとも思える程なので、私は内心気にしていた。
Aに指南している時のみ、あの目が生き生きと輝いている。
それだけではない。何か、妙に……Aにだけ発しているものがあるかのような、そんな空気を感じ取ってしまう。
私には、それが少々不気味でならない。
それ程までに、奴は目の色を変えてAと接する事があるのだ。
まぁ……特に心配する必要もないとは思うのだが。
もうすぐ日が昇りそうだ。
帰り道に仲間と出会った。その者は負傷していた。
「よもや、こんな傷を負うとは」
面目無い、とその者は言うが、きちんと治せばまだまだ戦う事は出来るだろう。
私はそれよりも、痣者としての寿命が迫っている事を常から不安に思っていた。
自分でも、情けない話だ。
「………『炎の呼吸』、継承者は」
「倅がもう十になるのだが、彼奴ならやってくれるだろう。弟子も調子がいい」
「左様か……。」
私と縁壱には、後継が居ない。無論、妹のAにもだ。
その事実を縁壱が然程問題にはしていないというのが、私には到底理解できない事であった。
しかし、Aにはやたら厳しく、その剣術を伝えようと奮闘しているのだ。
私は、十も離れていない異母妹に、そこまで期待をかけられぬ。そこまでの熱意をもってAに接する事など……私には出来やしないだろう。
何故なら、この私は、何処かでAを酷く哀れんでいるところがあるからだ。
本来ならばどこか良家に嫁ぎ、今頃子を育てていたであろう異母妹は……縁壱が家から追い出され、私は当主となる為に会えなくなり、実の母親に悪阻からの八つ当たりをされ耐える事が出来ず………失踪してしまった。
私が縁壱を探していれば、
私がAを探していれば、
あの時、Aを助けたのが私以外の誰かであれば。
こんな術を身に付けさせる事もなく、女子としての幸せを得られたのであろうに。
私はいつも、兄妹の事となると……どうしても不甲斐なさで一杯になる。
炎の呼吸の剣士について至った治療所から、どよめきが聞こえてきた。
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藤葛(プロフ) - レモンティーさん» ありがとうございます! 自粛開けもちまちまと更新していきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします(*^^*) (2020年5月30日 21時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - この作品大好きです!!なんせ緑壱さんが推しなもので…(´∀`*)更新頑張って下さい!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 0820e3db89 (このIDを非表示/違反報告)
藤葛(プロフ) - 澪さん» わああ……ありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです!!とても励みになります……頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!! (2020年5月20日 7時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
澪 - すごく好きです継国兄弟…こういう設定のもの大好きです…いいものを見させていただきました…ありがとうございます…!!頑張ってください!応援してます! (2020年5月20日 3時) (レス) id: c921836d0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年5月17日 4時