第四話 ページ4
「申し訳ございません、ご馳走になった上に、我儘に付き合わせてしまって……」
「私は構わない。偶には、気紛れに遊ぶのも良いかと思ってな」
Aは、夜半の賑わう街中よりも、ひっそりとした静かな道を歩きたいと云った。
それから、家がどの方角なのかを尋ねてみても、日が昇るまで……帰るつもりはないと云う。
これは、私にとって好都合でしかない。しかし、警戒されぬ為には……多少は咎めなければ。
「御家族が心配なさるぞ」
「………いいのです。心配してくれるのならば。」
「…………。」
何も返さずにいると、Aは後ろで手を組み、やや俯いて、続けた。
「あの人達が、私の事を本当に大切に思ってくれているのなら、心配してくれましょう………。
しかし、私には……出来の良い姉がいます。頭の賢い兄もいます。
私一人があの家から居なくなったところで、何も変わりはしないでしょう。
私は、跡継ぎでも何でもない、ただの娘なのですから」
愛されたい。大切にされたい。
誰かに、必要としてもらいたい。
その気持ちは……解らなくはない。だからこそ、嫌な事を思い出してしまう。
幼少の頃の記憶。
私はこの家には必要無いのやもしれぬ、という予感。
『奴』が出奔しなければ、追い出されていたのは私の方であっただろう。
………斯様な事を、未だ引きずり続けるのか、俺は。
僅かな苛立ちと焦燥。それから、微かな稀血の香り。
今は兎に角、感情が昂まるのを抑え、擬態を持たせる事に徹しなければ。
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光 - 作者様の前作から来ました!控えめに言って最高です。好き。更新頑張って下さい!応援してます! (2020年11月9日 21時) (レス) id: 41175d901c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤葛 | 作成日時:2020年7月13日 4時