藤ノ花ヲ食ベテ【鬼滅の刃】

・ side 行冥 ページ23

胡蝶の連れてきた鬼


しばらくは様子を見ていたが、ふと私自身が見られていることに気がつく


背の高さの違いにより向こうはかなり首を上げているだろう


昔の事を思い出す


まだ、私が鬼殺隊に入る前の事を


幼い沙代を…


そちらに顔を向ける


鬼の顔は見えないが、他の者も特には危害が加えられている音はしなかった


あの胡蝶が連れてきた鬼だ


危害を加えないと判断したから連れてきたのだろう


その子は考え事をしているのだろう


…時透のことだろうか


視線が逸らされたと思ったら次は時透が居るであろう場所を見つめている


それと同時に悲しそうでもあった


それはそうだろう


知らなかっただけでこの鬼殺隊にはこの子と同年代である者が自分の命をかけて他人の命を守っている者がいるのだから


この中では時透が同じくらいであろう


見つめていたのも頷ける


可哀想な鬼よ、そのような顔をしては君を好いている者も悲しむ


そう思いこの子を抱き上げた


いきなり浮いたからだろう


足をばたつかせている


『う、うう…う…？』


驚いた為か"う"という言葉のみを発しているのが愛らしいと感じた


そして、私の肩に乗せてやると少々興奮したような声を出す


『わぁ！高いです！悲鳴嶼様！』

「そうか…
楽しめているようでよかった…」


ああ、まだこの鬼は純粋に何かを楽しめる心があるのだな


胡蝶が気に入り傍らに置きたい、という気持ちも分からなくはない


そっと手を伸ばし頭を撫でると顔が緩んだ気がした


猫のように私の手に擦り寄ってくる


これ程愛らしい鬼も居ようとは夢にも思わなかった

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