02 ページ2
2回目の打ち合わせは、あたしの中のステージコンセプトが決まってから行われた。嵐ちゃんのソロコンサートはクリスマス公演になっていて、シンプルで単純かもしれないが、コンセプトは"雪"にすることに。会場全体は青で統一し、雪の結晶のモニュメントをステージへ、そしてなによりオープニングとエンディングには本物の雪を降らせたかった。オープニングは雪の舞い散るなかで、独唱から始まる。エンディングは雪と一緒に紙吹雪も飛ばして、会場いっぱいに雪を降り積もらせたい。彼の美しさのなかにどこか見え隠れする儚さが、雪によく似合うと思ったからだ。
打ち合わせは大きな反対意見もなく順調に進んだが、ときおり見せる嵐ちゃんの物憂げな表情が目につく。もしかして何か不満があるんじゃないだろうかと心配になったが、他のスタッフたちが全員賛成するなか、うまく嵐ちゃんに意見を尋ねることができないまま、打ち合わせが終わる。もう決まったことを覆すことはできないが、このまま素知らぬ顔をすることなんてできなくて、慌てて彼を追いかけた。
「あら……鳴上さん!!!」
嵐ちゃんと呼びそうになるのを堪えて、鳴上さんと呼び直す。彼はすぐに振り返って立ち止まると、「どうしたのそんなに慌てて……」と息切れをするあたしを心配した。どうかしたのはあたしじゃなくて、嵐ちゃんの方なのに。
「……雪がテーマで、本当にいいんですか?」
「え?」
「なんだかすこし、悲しそうに見えたので……」
「……」
「もちろん大きくテーマを変えることはできませんが、できるかぎり鳴上さんの意見を取り入れて修正することも……!」
「ありがとう」
優しいのね、と微笑む瞳はどこか遠くを見ているようで、今にも消えてしまいそうに思えた。だから無意識に彼の腕に手を伸ばして掴むと、驚いたように目を丸くする。知り合って間もない私にできることなんてないかもしれないが、一緒に、素敵なステージにしたい気持ちはたくさんあるから。嵐ちゃんには悲しい顔じゃなくて、笑顔が似合うから。そう伝えるよりも先に、嵐ちゃんが口を開く。
「雪に、いい思い出がないの。でも、」
掴んでいた手に、彼の手が添えられる。その手はまだ夏なのに冷たくて、すこし震えていた。
「あなたが一緒なら、いい思い出に変えられるかもしれないわね」
絶対に、いい思い出に変えてみせる。触れ合った手からあたしの熱が伝わって、心まで温まればいいのにと、その手を強く握り返した。
37人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちご - カップルになった続きがほしいです! (2022年4月16日 16時) (レス) @page10 id: 9dcf6f7d02 (このIDを非表示/違反報告)
冬梨(プロフ) - くまりつさん» こちらにもありがとうございます……! この嵐ちゃん連載は当方もお気に入りでして……好きだと言ってもらえて本当に嬉しです! なにより、コメントいただけるだけで本当に嬉しいです! ありがとうございました! (2022年3月14日 20時) (レス) id: cc516d419d (このIDを非表示/違反報告)
くまりつ - あああ嵐ちゃああああんっ!!ありがとうございます!!好きです!!(語彙力がなくてすいません💦) (2022年3月13日 22時) (レス) @page10 id: c5e980ac58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:冬梨 | 作成日時:2021年12月25日 8時