検索窓
今日:1 hit、昨日:21 hit、合計:32,902 hit

ページ2

炎天下、周りは暑さで外に出ようとしない中、少女__Aは鼻歌を歌いながら歩いていた。

少女が目指すのは寂れた神社。
富士山麓のこぢんまりとした神社だ。
御神木の楓の木は避暑には最適で、富士山から吹き付ける風は文明の利器、エアコンにも勝るのだ。

鳥居の真ん中を不躾に歩いてもそれを怒るのは誰もいなく、Aは手を清めずに境内の階段へ歩く。心做しか小走りにもなっている。

「おにいさん、こんにちは。」

白のワンピースをはためかせ駆け寄ったAに男は薄く微笑み、Aの頭に手を乗せた。指通りのいい彼女の髪をするりと撫でると、男はAに視線を合わせるようにしゃがみ込む。

「こんにちは、Aさん。」

心地よいバリトンの声とその優しげな手はAのお気に入りだ。勿論、おにいさんと呼ばれた男もAのお気に入りだ。

「今日こそおにいさんの事教えてよ!」
「……今日は暑いのでアイスを買ってみました。食べます?」
「えっアイス!?食べたい!」

境内の階段へ腰掛けると、男は丁寧にアイスの包み紙を取り去りAに渡す。
バニラとチョコレートをちまちまと食べ、二人で何気ない話をしながら日は少しづつ傾いていく。


____


「……もう帰らなきゃなあ。」

オレンジに染まった空を見上げ、Aは寂しそうに呟いた。
帰りたくないと駄々を捏ねる訳でもなく、Aはすっと立ち上がると男に帰るねと伝えた。

「送りますよ、一人では危ないです。」
「だいじょうぶ!お家すぐそこなの。」

ばいばい!と大きく手を振って神社を後にしたAは、家に着くまで浮かない表情だった。

____

そして家に入れば誰もいない空間が迎える。ゴミが散乱したリビング。卓上には冷えきったコンビニの弁当。

最近十歳になったAからしたら、量が多い上に大きく偏っている栄養は体に毒だ。

「……いただきます。」


寂しい夕食に、Aはいつも泣いていた。

弐→←零



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (120 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
239人がお気に入り
設定タグ:鬼灯の冷徹 , 鬼灯
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雪寝子(プロフ) - ボンクラMONKEYさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!ゆっくりとした更新ですがどうぞ今後ともお付き合いくださいませ! (2023年3月7日 19時) (レス) @page26 id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY(プロフ) - めちゃ好きです。この作品に出逢えて良かったです。ありがとうございます。 (2023年3月1日 20時) (レス) @page25 id: 402691cbe4 (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - noche/ノーチェさん» 数ある作品の中から見つけて下さって本当にありがとうございます!評価まで頂き…本当に嬉しい限りです!のんびり書いておりますが、どうぞお付き合い下さい。本当にありがとうございます! (2022年9月26日 22時) (レス) id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - この作品を気づくのが遅くなってしまったことがとても悔しいです。評価を失礼ながら100票目を頂きました。もちろん1番右です!遅いかもしれませんが無理をしない程度に更新を頑張ってください。失礼しました (2022年9月26日 0時) (レス) @page22 id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - 暇人(笑)さん» わああ、ありがとうございます!とても励みになります……!更新頑張ります! (2020年9月3日 11時) (レス) id: 6c23cea859 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雪寝子 | 作成日時:2020年8月2日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。