弐 ページ3
____地獄にて。
「………………。」
浄玻璃鏡を前にして、悲しげな顔をする鬼がいた。
「鬼灯君、またあの子を見ているのかい?」
投げかけられた質問に鬼灯は答えなかった。
閻魔はそれを不思議そうに眺めた。彼が一人の生者に固執するのは珍しい事であった。
「……現世も酷いものですね。」
浄玻璃鏡の電源を切ると、鬼灯は改めて閻魔に向き直った。彼の表情はいつも通りの冷徹に戻っている。
「孤食って言うんだっけ?あんな小さな子どもに…酷いことをする親もいるのだね。」
「……
強く握られた鬼灯の拳は痛々しい音が聞こえる勢いである。映された少女に鬼灯と閻魔は酷く心を痛めた。
「……私が…私があの子を____」
「鬼灯君?」
「…いえ、なんでもありません。さあ仕事してください。」
垣間見えた鬼灯の心は荒んでいた。
仕事の合間を縫っては現世の少女に会いに行っている。それほど鬼灯は少女を気にかけていた。
一体何が鬼灯を動かしているのか、皆目検討もつかない閻魔は今日も亡者を裁くのだ。
____
翌日、Aは蹲って恐怖に震えていた。
数日ぶりに顔を合わせた母親に手を挙げられたのだ。
頭を叩かれ、顔を殴られ、腹を蹴られた。
十歳では理解できない汚らしい罵声も浴びせられ、Aの心は崩れた。
___おかあさんはわたしがきらいなんだ。
母親が家に帰ってくる度に叩かれ、殴られ、蹴られ、罵声を浴びせられる。
そしてしばらくしたらまたどこかへ行ってしまう。
帰ってくる事を望んでいたが、いつしか帰って来ないで欲しいと願ってしまうほどにAは母親を恐れていた。
239人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪寝子(プロフ) - ボンクラMONKEYさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!ゆっくりとした更新ですがどうぞ今後ともお付き合いくださいませ! (2023年3月7日 19時) (レス) @page26 id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
ボンクラMONKEY(プロフ) - めちゃ好きです。この作品に出逢えて良かったです。ありがとうございます。 (2023年3月1日 20時) (レス) @page25 id: 402691cbe4 (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - noche/ノーチェさん» 数ある作品の中から見つけて下さって本当にありがとうございます!評価まで頂き…本当に嬉しい限りです!のんびり書いておりますが、どうぞお付き合い下さい。本当にありがとうございます! (2022年9月26日 22時) (レス) id: 8c56c9b648 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - この作品を気づくのが遅くなってしまったことがとても悔しいです。評価を失礼ながら100票目を頂きました。もちろん1番右です!遅いかもしれませんが無理をしない程度に更新を頑張ってください。失礼しました (2022年9月26日 0時) (レス) @page22 id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
雪寝子(プロフ) - 暇人(笑)さん» わああ、ありがとうございます!とても励みになります……!更新頑張ります! (2020年9月3日 11時) (レス) id: 6c23cea859 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪寝子 | 作成日時:2020年8月2日 17時