君のいない世界 (ページ11)

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俺達は準備を終え、家を出た。

途中、花屋に寄って、大野さんによく合う

青の薔薇を買った。

車で公道を抜け、少し裏路地に入る。

辺りはとても静かで、貴方にピッタリな場所。

「和、辛く…ないの？」

そう俺に尋ねるA。

「俺がそんなに辛い辛い、って言ってたら

大野さん、戻ってきちゃうから(笑)」

そう言って、笑って見せた。

これは、本当。

確かに

人生の半分過ごしてきた仲間を失うのは辛いし、

かなりショックな出来事だったけど

人は必ず死を迎えるから。

遅かれ早かれ…ね。

「確かに辛かった。

毎日泣いても泣いても、大野さんは戻ってこない。

ふと思ったんだよね、

こんなに泣いている俺達を見たら、大野さん…

どう思うんだろうな…って。

それを考えた時にやっぱり

笑ってなきゃいけないなって、思ってさ」

ね？と、同意をAに求めようと

そちらを見ると、

目を真っ赤にして、俯くA。

「ちょっと…、なんで貴方が泣くのよ…」

「ごめ…っ、だって…」

Aはもちろん、大野さんの事を知ってるし

どれだけ大きな存在だったかって事も知ってるから

余計に、悲しくなってしまったんだと思う。

「貴方は優しい人だね」

「和は…強い人だね」

「強くなんてないよ…。

一番強いのは…、大野さんだ」

窓の外に見えてきたのは…

海辺を覗く丘にある小さな石碑。