86 ページ36
「実は前に部室でAにあげた苺タルト、俺が作ったやつやねん」
『え？じゃあ今食べた苺タルトも、、、？！』
「うん、俺が作ったやつ♪」
それが本当ならほんまに凄い、、、私も結構Nakamuとかが買ってきてくれるお高いスイーツ食べてきたつもりやけど、あの苺タルトに今日食べたガトーショコラ、何方もプロ顔負けの美味しさやった、、、
『でもなんで初めに教えてくれなかったんですか？自分で作ったんなら普通に言ってくれれば良かったのに、、、』
私の問いに、マンちゃんさんはどこか真剣な面持ちで私を見つめてきた。
「、、、俺な、夢があんねん」
『夢？』
「うん、夢。」
いきなり何故夢の話？と思ったが、どうも真面目な話っぽいので私は大人しく彼の口から次の言葉が紡がれるのを待った。
「俺の家な、ひいじいちゃんの代からずーっと受け継がれてる言わば老舗のスイーツ店やねん。老舗って言っても、時代に即してスイーツとか店の見た目とか雰囲気とかは変わっていってんねんけどな？」
曾祖父の代からと言うと、現店主だと言うマンちゃんさんのお父様は三代目、もしマンちゃんさんがこの店を継ぐなら四代目になる訳か。
「物心つく前から、俺は一番近い場所からこの店の事を見てきた。きらきら宝石みたいに輝く両親達の作ったスイーツ、それを食べて気持ちの良いくらい笑顔になってくれるお客さん達。俺は真っ直ぐ、この店を継ぎたい。そう思っててん」
「でもな、、、ほら、ようあるやん？小学生の頃、授業の一環で書かされる、『将来の夢』がテーマの作文。」
『嗚呼、私も何度か書いた憶えがありますね』
「小学五年生ぐらいの時、、、やったかな、俺は迷う事なく『将来は僕の作ったスイーツでみんなを笑顔にさせたいです』って趣旨の発表をしてんな？そしたら、担任の先生からは良い夢やねって褒めて貰ったけど、みんなからは『女みたい』『女々しい』って言われちゃってさ、笑」
『、、、周りから、ですか』
「うん。同じクラスの奴ら。男だけじゃなく、女の子達もちょっと引いてた感じやった。男らしくないよね、みたいな感じで陰で言われとった。」
「『男女平等』なーんて綺麗事、よく言われてるけど実際、みんなの心の奥底に根付いている『男らしさ』『女らしさ』って概念は、そう簡単には抜けてへんのよ。」
陰で言うぐらいなら本人に聞こえんとこで言えよって話よな、と話す常盤色の瞳からは、『痛み』が感じ取られた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒翠(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます！この作品に出会って下さったということに、感謝の気持ちで胸いっぱいです。お優しいコメントをありがとうございます！ (2023年3月14日 0時) (
レス) @page40 id: 73723415d9 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - コメント失礼します。この小説面白いです。黒翠さん、素敵な作品をありがとうございます (2023年3月13日 21時) (レス) @page39 id: e066df4934 (このIDを非表示/違反報告)
黒翠(プロフ) - リリィさん» コメントありがとうございます！嬉しい限りです！そのお言葉で更新頑張れますありがとうございます！！ (2022年2月22日 0時) (レス) id: 73723415d9 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ - とても面白くて続きが楽しみです！ (2022年2月21日 21時) (レス) @page6 id: 74ae9aa626 (このIDを非表示/違反報告)
黒翠(プロフ) - 露助さん» いえいえそんな！いつもコメントありがとうございます！頑張れます〜！(書いてる私自身も思ってます^^;) (2022年2月16日 22時) (レス) id: 73723415d9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒翠 | 作成日時：2022年2月8日 0時
