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「で、今日もかけるってワケ?」
「うん」
「や、もったいなくね?100円」
100円で2分っしょ?、と
岸くんは両手を広げて
「だって。それしかないし」
「けどさぁ…、」
浮いたままの手をぐるり回すけど
出てきたのはため息だけで
行き場をなくす腕を下げる
通された4人掛けの席
斜め前に座った岸くんは
チラリ光ったスマホを見て
「今駅着いたってさ」
映し出した志保さんとのトークに
分かりやすく上がる口元
「でさ、」
「え?」
「ん?」
「行かないの?」
パチリとつい動く瞼に
一瞬2人で固まって
「や。すぐそこだし」
「そっか」
そういうもんなのか
で、と再び置かれた声に
水をひと口流し込む
「俺さ。把握しきれてねぇんだけど、」
長い指をくるりと丸めると
手は顎の下に収まって
「スマホから電話かけたらさ、もう出てくれなくなんの?」
「たぶん。着信拒否にされちゃうから」
「んー、で。公衆電話だと、それができねぇようになってるってこと?」
「や、それは分かんないんだけど」
ん?、とひそめられた眉に
ピタリ固まったその動き
上を向いたままの瞳をパチパチ瞼が遮って
ハッキリ浮かぶはてなマーク
岸くんは分かりやすいから
有り難いというか、何というか
「着信拒否って、その番号の相手を拒否してるわけでしょ?」
「ほぉ」
「でもさ。公衆電話だと、誰がかけてるのか分かんないじゃない」
「あー……?あー!はいはい、なるほどね!」
しつこく上下に揺れる首
……これ、本当に分かってるのかな
「だから公衆電話なら平気ってことか!」
「伝わった?」
「あれだろ?俺が1回電話しても、おんなじトコから今度はAがかけるかも的な!」
一応、伝わったらしい
「まだ分かんないけどね」
「いや!いけるっしょ。それは」
なんだか急に勢いに乗ると
そういやさぁ、なんて続けて
肘に潜り込む下ろした手
「昨日も行ったんだけどさ、あのラーメン屋。こないだとおんなじくらいの時間に」
眉を下げて右目を細めながら
唇も少し尖らせて
「いなかったんだよね」
「いなかった?」
「そ。紫耀がいたらさ、まぁなんか声かけよっかなぁって。んで、わりと粘ってみたんだけど」
一旦言葉を切ったあと
見つけらんなかったなぁ、と
もたれる背に漏れるため息
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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます!ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります!! (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます!最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです! (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふとん | 作成日時:2016年12月18日 21時