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ゴクリ水を飲み干した後
また光ったスマホを手に取ると
え？、と岸くんは背を戻して
「パン？」
やけに間の抜けた声を出す
「どうしたの？」
「志保がさ、紫耀見つけたかもって」
「え？」
ほら、と差し出された画面には
”北口の先にあるパン屋さん分かる？”
”平野くんっぽい人いるんだけど...”
「うそ、」
うーん、と困り顔のわんこ
言葉を返すような隙もなく
また次の文字が送られて
”やっぱり違うかも”
”金髪だし”
覗き込んでいた画面から
視線を上げればぶつかる眼
「な、金髪って」
「紫耀くん、だよね」
唇を閉じる暇さえなしに
テーブルには影がかかって
「行くか」
「え？」
よっぽど気が急いているのか
俺が出すから、なんて言っちゃって
あっという間に背にしたレジに
私は財布を出せないまま
ズンズン進む岸くんの背中に
追う足は少しだけ駆ける
「Aは分かる？志保が言ってたパン屋」
「や、わかんない」
「そっか。まぁすぐそこだから」
……お金には触れないんだ
ドリンクバーだけだったとはいえ、
岸くんが全部出すなんて
なんだか槍でも降りそうだ
改札の前をすり抜けて
北口の先へと進んでいけば
ふんわりくすぐる甘い香りに
いた、とその声があがって
「志保、」
前髪をくしゃり直したあとで
岸くんが背中に呼びかける
「あ、優太。早かったね」
「へへ、そ？」
「なんかAちゃん疲れてない？」
「岸くん、歩くの速くって」
「えっ、ごめん！」
もう、と呆れた志保さんに
岸くんはちょっと肩をすくめて
思わずクスリと洩れる声
「てかさ、なんで志保はこっちに来たわけ？」
「Aちゃんにね、お土産買ってこうと思って」
「私に？」
「ここね、クロワッサンがすっごく美味しくて。で、Aちゃんに買ってこーって思って入ったら、」
「紫耀が中にいたんだ？」
小窓から覗くパンの向こうは
たしかに誰かが動いていて
不意に屈められる膝が見えて
慌ててまた視線を戻す
「どうする？」
「え、入る？」
”OPEN”の札を前にして
ぐずぐず顔を見合わせていれば
カランとドアのベルが鳴って
「今ね、メロンパン焼きたてなんすよ。いかがですか？」
ふわり細められる瞳は
紫耀くんの本意ではないけれど
月のほうが似合う気がした
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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます！ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです！ (2017年9月21日 23時) (
レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります！！ (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます！最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです！ (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふとん
| 作成日時：2016年12月18日 21時
