ふたごの片寄

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「A、あっちの木かげ行こっか」






あたしの手をスルリと引いて、臣先輩の腕の中から引っこ抜いた。







いくら好きでも

ろくに話したこともないのに、急にふわりと抱かれたら

「嬉しい」より「恐い」






臣先輩の香りから、涼太の優しい香りがあたしを包み込む。

あたしの鼻には、これが1番落ち着くの。







木かげの地べたに腰を落とすと、涼太が心配そうに顔を覗き込んできた。


「気にしなくていいよ、A。
臣先輩っていつもあんな感じだから笑」





いやさ、優しいフォローなんだろうね、今の


だけどなーんか。

…臣先輩をディスってはいないかい？涼太氏。笑




「いつもあんな感じ」＝「たらし」

ってことじゃん。




さーすがあたしのお兄様。
たまに天然能力をビビビッて発揮するんです。今みたいに。



だけどその涼太の天然が、

今のあたしのクスリになったのは事実。


『そーなんだ、ありがと。笑
少しだけだけど落ち着いた』


「そっか、良かった！
あのね、ふたごだからか何なのか分かんないけどね、」


『うん？』


「Aが"楽しい"って思ったり、"恐い"って思ってたら、その感情がドストレートに伝わってくるの」





「うまく説明は出来ないんだけどね」と笑う涼太


分かる分かる。すっごい分かる。

涼太と離れてても、何かのテレパシーみたいに


「悔しいって思ったな、今」とか。






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あたしたちはよく、

"仲が良すぎるふたご"なーんて言われる。



まぁ確かにそうかもしれない。





部活は違えど、部活終了時刻は同じだから

帰りも一緒だし。




顔や性格はもちろん違うよ？あたしたち。


涼太は器用で何でもできるのに、

あたしはそのま逆で、不器用で何も出来ない。






できるとしたら動物の飼育ぐらいかな...笑





だからこう、
恋愛も扱えないんだ、あたし。



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