あいことば。〜短編集〜【ハイキュー】【黒子のバスケ】

はいいろ。《見解》【灰崎 祥吾】【花宮 真】 ページ30

優等生の猫を被って生きている。

そんな俺の本当の友人という者は、
実は、部活仲間だった者と、
ほんの数人だけということを知って置いてほしい。

そんな中でも、かなり変わっている。

いや、歪んでいる友人の話をしよう。


奴は、友人といっても年下で、
立場的に言うならば大学での後輩といったところだろうか。

整った容貌と、難解な問題を軽々と解いていく頭の良さ。

加えて、他を寄せ付けない圧倒的な絵の才能を持っている。

そういう特別なモノを持って、充分に愛されて育ったはずの奴は、

なぜか、性格が歪んでいた。

霧崎第一のレギュラーだった五人と同等か、それ以上に。



「ねぇ、花宮さん。」

「“愛"って何なんですかね？」



大学のサークルの打ち上げの帰り道。

少しも酔っていないだろう奴は、哲学的なことを唐突に尋ねた。

いや、自分の考えを吐き出すために、わざと問いかけにしたのかもしれない。


「さあな。俺に聞くなよ。」


俺に答えを求めなくとも、
お前の中に既に答えはあるんだろう？

「冷たいですよね。ホントに。傷つくなー、私。」

真っ直ぐに前を見て歩いていた奴は、
少し目線を足元に落とすと、低い声で呟いた。


「私は愛されてますよ。きっと。私が思う以上に。」

「けど、それが何になるんでしょうね。」


星の一つも見えない、暗い夜空を見上げ、そっと息を吐き出した。

静かに吐き出された息は、白く染まって消えていく。

「愛なんて目には見えないもの、

証明する術なんてないし、

それが無いとも言いきれない。

そんなもの、本当に必要なんでしょうか？」


遠くに、黒髪の男の姿が見えた。

何時も、奴を迎えに来ている背の高い男だ。


「あぁ、迎えが来たみたいですね。

ここまで送って下さって、ありがとうございました。」


人相の酷く悪い男の隣に並ぶと、奴は頭を少し下げて帰って行った。



愛を知らない男と、愛を知っている女。

純粋で幼い男と、汚くて大人びた女。

真っ白な心、真っ黒な心。

本心からの醜い笑顔、作られただけの綺麗な笑顔。


どちらが幸せだったのだろうか。

どちらが人間として生きているのだろうか。


家族からの愛を知らない、

家族から愛されて育った。


そういう風に、正反対に生きていた二人だから、

互いに惹かれあったのかもしれない。


そんなことを思いながら、二人の姿を睨みつけて、

俺も一人で帰路に着いた。

星なんか見えないどす黒い夜空が、あいつらには似合ってる。

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