【刀剣乱舞】肆・生まれ育った本丸、何かブラックにされたらしいんでちょっと行ってきます。

＃百六十三振り目 ページ20

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「人にはそれぞれ性格というものがある。俺も主にこの身を賜ってから、感情を持ち、自分なりに生きていくように努力しているつもりだ」




えぇえぇ、そうですか。



その主は今の主ではなくて私の母親で、今君は自分なりに生きていくどころか人の姿を得てからのほとんどの記憶を奪われているんですよ＿＿＿＿。

...という、割と棘のある言葉は心にしまい込み、気づかれないように溜め息をつく。



記憶を取り戻したら、果たしてこいつは私に何て言うのだろう。



主に対する忠誠心に変わりはない。

しかしここから脱し主を救うには、敵として対峙した人間の娘と手を組みざるを得ない。



＿＿＿正直、複雑な状況に置かれている長谷部が胸中どんな事を考えているかは、私にも推し量れなかった。




「お前の性格からしてみれば、俺の生き方に疑問を持つのももっともだろう。俺が感じない重荷を感じる事があるのかもしれない」

『...うんうん』

「...だが、己にとって絶対に譲れない存在(モノ)を守る時＿＿＿。己の力不足が故に、後悔などしたくはないだろう」

『...！』




その言葉に、私は顔を上げた。


長谷部は気づかない。

だが、その瞳は昔の記憶を探るような儚い色に揺れていた。




「もう二度と、後悔などするものか。...もう、御免なんだ」




＿＿＿あんな辛い思いをするのは、...もう。
...という、本当に小さな彼の呟きを私が聞き取れたのは多分奇跡だ。

こんのすけと、顔を見合わせる。


ねぇ長谷部。

聞いてもいい？


その「辛い思い」って、どんな記憶？


影華との関係の事を言っているならまだ分かる＿＿いや、もしそうだったとしたら、"また本丸の刀に手ぇ出しやがったのかてめぇ！！"って怒るけど＿＿＿。色々と納得できる。



けど。

それはきっと、違う。



何で、"私と暮らしてた頃の顔でそんな事言うの？"



...口に出して素直に聞くことが出来たら、どれほど良かったか。

初めて、長谷部の懐かしい顔を見た気がした。
同じ人物のはずなのに、...今この瞬間まで見てきた表情(それ)とは、また別物の。


影華が知らなくて、私が知ってる顔。


とでも、言うのだろうか。




『...そんなに後悔してるなら、...さっさと思い出せよ、馬鹿...』

「A様...」




ぎゅ、と拳を握りしめ、...爪が皮膚に食い込む。



哀しい顔するな。辛そうな顔するな。



..."思い出せない"。

"思い出してもらえない"。


どっちも同じだけ、苦しいんだから。




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