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図書館業務は久しぶりだったので、完璧にこなせるか心配だったが、それよりも心配なことがあった。
郁の両親が、「郁の同僚は大丈夫な人かしら」なんて言って、突拍子もないことを訊いてくる可能性があるのだ。
そこで失敗したら郁に、いや堂上班全体に迷惑をかけることになる。
『どうしようかな…』
麻子が座っているカウンターに向かいながら頭を抱える。
「おはよう、高尾」
『あ、おはようございます』
後ろから堂上教官に声をかけられた。
「何だその困り顔は」
『いやぁ、郁ちゃんのご両親に何訊かれるか分からないと思ったら恐くて…』
そう言うと、堂上教官は「何だそんなことか」と笑った。
「なんか小牧も同じようなこと言ってたな。あいつは徹底的に接触を避けるために書庫作業に入るらしいぞ」
『え、私も行っていいですか?』
「ああ。あいつもういると思うから書庫に入ったら声かけてな」
『はい!ありがとうございます!』
堂上教官に頭を下げて周囲を見回す。
今まで気づかなかったが、ご両親はもうすでに閲覧室に入っていた。
駆け足で書庫に入る。
若干重たい扉を開け、小牧教官を探す。
『小牧教官…?』
書庫の中は背の高い本棚が迷路のように並べられているので、その中に隠れている小牧教官一人を探すのはかなり困難である。
それに書庫業務はいつも忙しい。印刷機から次から次へと吐き出されるリクエストを一つずつ素早く消化しなければならない。
『小牧教官ー』
「ん?え、高尾さん?」
声がした。
一つ前の本棚の奥である。
『あ、小牧教官いた…あの、一緒に書庫業務やってもいいですか?』
「もちろんいいけど…でも上はやらなくていいの?」
上というのは通常業務のことである。
『郁ちゃんのご両親の前で変なことしたらいけないので…』
「ふふ、そっか。じゃあ一緒に頑張ろうね」
『はい!ありがとうございます!』
じー、と印刷機がまた新しいリクエストを印刷する。
私は走ってそれを取りに行った。
『2019年・日本の総論』『日本の時事2019』『2019年を考える』
この三冊を詰めて欲しいらしい。
『時事のジャンルはー…』
本棚へ走っていき、三冊を引っ張り出すと、今度は専用エレベーターに走る。
分厚いムック本なので上に上がった時に図書館員が取りやすいようにセットもしっかりする。
全ての準備が終わり、エレベーターの横のボタンを押す。
久しぶりだけれど、ちゃんと覚えていた。
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アオイ(プロフ) - みさこさん» わあああ!!ありがとうございます!!返信遅くなってすみません、仲良くしてください!! (2020年3月9日 11時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
みさこ(プロフ) - 先程フォローさしていただきました。よろしくお願いします。V6大好き(女子)です (2020年3月5日 1時) (レス) id: 96340430ed (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。消したつもりになってました。申し訳ございません。すぐに消させていただきました。 (2019年8月3日 23時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月3日 23時) (レス) id: 9ac913b464 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kuroki
作成日時:2019年8月3日 23時