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「こちらが花火でイタズラした子供たちです」
堂上教官が木村悠馬と吉川大河に頭を下げさせる。
向かいに座るのは『子供の健全な成長を考える会』の会長である。熱心な教育ママなタイプの中年女性だ。
『考える会』に花火の件を謝罪に行くというのが玄田隊長の授けた「大人のケンカ殺法その一」らしい。
ちなみに『考える会』事務所を訪ねる前に今回のリーダーである堂上教官が喋るなと命令したので、私と郁はさっきから黙りっぱなしである。
「本人たちも反省してどうしても謝りたいというので…」
「「すみませんでした!」」
「まぁねぇ…子供のしたことですし。怪我人も出なかったから大袈裟にはしませんが。でも何らかの指導は必要かと思いますよ」
最初は不機嫌そうだった会長さんも清々しいほどのはっきりとした謝罪に少し和らぐ。
それを見た堂上教官はすかさず「そのことなんですが」と提案する。
「二人の両親と学校にも連絡して相談したんですが、反省も兼ねて社会勉強をさせてはどうかという話になりまして。今度のフォーラムですが、生徒に勉強会を作らせて参加させてみてはどうかと。この二人に責任者をやらせます。会の立ち上げや運営、図書館問題についての自主的な勉強などを通じて社会活動の意義と責任を学んでもらおうかと。通り一遍の反省文や謹慎より子供たちの自立と成長を促せるのではないかと思います」
「それは有意義な試みですね]
と大きく頷き、二人に向かって「責任のある立場を受けるからには投げ出してはいけませんよ」と微笑んだ。
事務所を引き上げた帰りに寄った三鷹駅前の喫茶店で、堂上教官が恐い顔で子供たちを睨んだ。
「これで引っ込みはつかないからな。今さら日和ったら張り倒すぞ」
「やめないよ。次は大人のケンカ殺法その二だよね」
機嫌よくオレンジジュースをすすったのは大河だ。
よくまああんな堂上教官を前に余裕そうに笑えるなぁ…と感心してしまう。
隊長の言ったその二は「数を集めて戦力とせよ」である。要は図書の規制に反対する生徒を集めて勉強会の体裁を作れと二人に指示しているのだ。
「賛同する生徒はかなりの数が見込めますよ。図書の規制に不満を抱いている層は僕たちの他にも多いんです。単に『考える会』に対して発言する方法がないから沈黙しているだけで、自由な読書を希望する層がむしろマジョリティなんです」
悠馬のしたり顔はだんだん見慣れてきて正直あまり違和感を覚えなくなってきていた。
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アオイ(プロフ) - みさこさん» わあああ!!ありがとうございます!!返信遅くなってすみません、仲良くしてください!! (2020年3月9日 11時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
みさこ(プロフ) - 先程フォローさしていただきました。よろしくお願いします。V6大好き(女子)です (2020年3月5日 1時) (レス) id: 96340430ed (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。消したつもりになってました。申し訳ございません。すぐに消させていただきました。 (2019年8月3日 23時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月3日 23時) (レス) id: 9ac913b464 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kuroki
作成日時:2019年8月3日 23時