検索窓
今日:9 hit、昨日:36 hit、合計:159,468 hit

■69 ページ21

「僕たちは子供の立場から『考える会』に抗議し、図書館の自由を支援するため行動しなければと考えて…」

「そのご大層な考えの結果がロケット花火か」


無感動な口調で斬り捨てた堂上教官に、ぺらぺら喋っていた木村悠馬が言葉を詰まらせた。


「図書館の自由を支援か。余計なことをしてくれた」

「おれたちは図書館に味方しようと思ったんだ!図書館にとっても『考える会』は敵だろ、会が反発されてることが分かったらあいつらだってでかい顔できなくなるじゃないかっ」


どこまでも容赦のない堂上教官に食って掛かったのは吉川大河だ。向こうっ気は強いらしい。


「意見も何も表明せずに気に食わない相手を不意打ちで攻撃するのは抗議行動でも何でもない。そんなものは単なる嫌がらせだ。『考える会』は正規の手続きを踏んで今日の集会を開いた。正しい順序を踏んだ相手に花火を打ち込んだお前たちとどっちが真っ当に見えるだろうな」


見事な論破である。教育期間中、これでどれだけの新隊員が泣かされたか分からない。


「『考える会』が正しいって言うのかよ!あいつら、俺たちが読みたい本を取り上げることしか考えてないのに!」


吉川大河の放ったこの一言で、私は完全にアウトだった。一瞬にして過去の記憶が蘇ったのだ。

学校にも近所にも友達はいない。家に帰っても親がいない。
そんな時でもいつでもどんな日だってずっとそばにいてくれた本という存在を、殴られて体がボロボロになってまで守りたいと思ったあの日。

人に殴られるなんて初めてで、怖くて、痛くて、本当はすぐにでも泣きたかった、逃げ出したかった。

それでも本を守り続けたあの時の感情は今でも忘れられない。

どうして大人はただ本を面白がるということを子供に許してくれないのか。自分たちはただ面白がるために本を読むくせに。


堂上教官のことを睨む吉川大河の眼差しに少しひるみ、一歩下がった。


「少なくとも、やり方は『考える会』が圧倒的に正しい。正しい手続きで主張された意見にはルールを守る人間が主張したという裏付けがつく。大人が正規の手順を守るのは自分の主張に裏付けを作るためだ。お前たちのやり方だとどうだろうな」


自由な読書を規制する『考える会』への抗議として花火を打ち込みました_聞いた他人にその主張は正しく届くか。


堂上教官の意見は正しい。正しいけど、私には子ども相手にぶつけるにはあまりにも残酷に感じられた。

■70→←■68



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
267人がお気に入り
設定タグ:図書館戦争 , 小牧幹久 , 田中圭   
作品ジャンル:ラブコメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アオイ(プロフ) - みさこさん» わあああ!!ありがとうございます!!返信遅くなってすみません、仲良くしてください!! (2020年3月9日 11時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
みさこ(プロフ) - 先程フォローさしていただきました。よろしくお願いします。V6大好き(女子)です (2020年3月5日 1時) (レス) id: 96340430ed (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。消したつもりになってました。申し訳ございません。すぐに消させていただきました。 (2019年8月3日 23時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月3日 23時) (レス) id: 9ac913b464 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アオイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kuroki  
作成日時:2019年8月3日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。