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うわ、痒い!
年頃にそぐわない堅苦しい言葉を多用する喋り方は、気取っていることが露骨に漏れて聞いているほうが恥ずかしい。
「僕たちの中学の図書館は購入図書の選定がリベラルで生徒に支持されていたんですが、先日の高校成連続通り魔事件の後、『子供の健全な成長を考える会』の介入でエンタメ系の図書が大量に処分されました。処分図書の基準は独善的で到底納得できるものじゃありません」
「『荒野のカナ』が主人公が銃を持ってるのが望ましくないとか…ムチャクチャだよ」
吉川大河の挙げたタイトルはライトノベルの人気シリーズの一つで、西部劇的な世界観の舞台で一流のガンマンを志す一人の少女がオートバイで旅をしながら成長していく物語である。
武蔵野第一図書館にも入っているが、児童から若い世代を中心に貸出し数の多い人気図書だ。
「そりゃまたヒステリックな話だなぁ…」
小牧教官が軽く眉をひそめた。
『子供の健全な成長を考える会』は教育委員会の提唱に賛同し、青少年に悪影響を与える図書の排除を武蔵野市内の図書館に求めているが、学校図書館で既にそのような運動を行っていたのは初耳である。
図書隊は学校図書館の情勢には疎い。
学校図書館は根拠法が学校図書館法となり、図書館法を根拠法とする公立・私立図書館とはその系統を画する。つまり図書館の自由法の対象外であり、もともと検閲図書を収集する権限がない。
司書や司書教諭が個人的に買ったものを寄贈する形で所蔵することはあるが、それにしてもその量は微々たるものであり、それゆえメディア良化委員会の検閲からは基本的に除外されている。
図書隊も学校図書館との交流には日本図書館協会を介し、必要のない限り直接の交流はもたない。迂闊に図書隊と関係すると、却って良化特務機関にマークされるためである。
「そのシリーズ、良化委員会の検閲にかかったことないよね?」
小牧教官が私の方をチラッと見て尋ねる。
突然話を振られたことに驚きながらも頭をフル回転させる。
ええっと『荒野のカナ』シリーズは…
『少なくとも検閲優先度が高いものとしては挙がったことがないはず、です』
記憶もあやふやで、こうですと断言できないことが悔しい。
「図書館の本が規制され、僕たちが読書の自由を享受できるのはもはや公立図書館だけです。『考える会』が図書館の自由をも蹂躙しようとしているならそれを看過することはできません」
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アオイ(プロフ) - みさこさん» わあああ!!ありがとうございます!!返信遅くなってすみません、仲良くしてください!! (2020年3月9日 11時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
みさこ(プロフ) - 先程フォローさしていただきました。よろしくお願いします。V6大好き(女子)です (2020年3月5日 1時) (レス) id: 96340430ed (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。消したつもりになってました。申し訳ございません。すぐに消させていただきました。 (2019年8月3日 23時) (レス) id: deeb297800 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月3日 23時) (レス) id: 9ac913b464 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオイ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kuroki
作成日時:2019年8月3日 23時