十二笑 ページ12
「_A」
「副長」
今にも万事屋に笑顔を向けてしまいそうなAの手を無理やり引いて早足でその場を去る
本人は俺の様子に疑問だ、というようにでも抵抗もせずされるがままについてくる
万事屋が何か言っているが知らんこっちゃねぇ
俺は我が儘だ
俺は男だ
俺は弱いんだ
自分の手からAが離れていくのが一瞬怖かった
俺が笑わせなきゃ意味ねぇんだ
他の奴じゃ、俺が嫌なんだよ
「副長」
「...」
「副長...!」
ちょっと語気を強めたA
初めての俺に対するハッキリした口調に驚いて我に帰った
「お前...」
「こちらは屯所の方向じゃありません」
真っ直ぐ俺を捉えるAの瞳
深く暗く儚げなその瞳が俺を捉えて離さない
「ふっ...ふはははは...!」
「どうされました?」
_笑った、大声で
俺は公道の真ん中で腹を抱えて笑った
(そうだコイツはこういう奴だよ)
俺ばっかり振り回されて、でもいつも俺の思った斜め上をいきやがる
文句のひとつでも言われるかと思ったが_
まさかそんなしょうもない事を指摘されるとは
「A、お前はいい女だよ」
「お褒めに預り光栄です」
「テンプレートみてぇな答えだな」
そう言って微笑みかけると、Aの手をいまだに掴んでいた事に気づき急いで離した
握っていた部分が熱く、熱を含んでいる
俺はこっ恥ずかしくなってそっぽを向いたまま頭を掻いて歩き出した
「_嬉しいです」
「は?」
一瞬心臓を掴まれたような、そんな感覚がして後ろを振り返った
Aの、初めての意思表示
初めて俺に見せた感情
嬉しい_その言葉が俺の体の中を駆け巡る
「テンプレートだと仰いましたので」
ドクリ、と低く心音が波打った
(俺が言ったから_か)
周りからの視線が痛くなってきたので、そう聞き直したかったがやっぱりいい、と言って屯所への道を歩く
足取りが、重い
総悟がアダルトビテオを見つけていようがいまいが、今はどうでもいい
焦燥感、異様な不安、感じたことのない感覚に陥って俺は帰り道何も言葉を発することが出来なかった
「A」
屯所の入り口に入ったところで改めてAに向き直る
Aはいつもの無表情で俺を見上げた
「俺はまだ、諦めてねェから」
三年前のあの日と同じ
屯所の門の下で結んだコイツとの契り
「俺がお前を笑わせてやる、だからお前が笑ったときは_」
"お前は俺の嫁になる"
_期限まで、あと一年
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めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんばんは。届くか分かりませんが、終わりなんですよね。どうなったか知りたかったです。素敵なお話、ありがとうございます! (5月14日 2時) (レス) @page12 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
零 - ヤダコレ土方さんがめっちゃかわいい,,,泡抹(ひゅーず)さん書いてくれてありがとうございます!癒されました(笑) (2018年11月3日 14時) (レス) id: 4b47465209 (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(ひゅーず)(プロフ) - まっちゃむーしゅさん» コメントありがとうございます!土方さんはカッコいいイメージが強いのですが、私は可愛い土方さんも大好きで...。可愛い土方さんが書けてたら嬉しいです (2018年11月1日 22時) (レス) id: 9351272389 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃむーしゅ(プロフ) - え、、、あの、、、好きです (2018年10月31日 17時) (レス) id: ea9a3f21f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泡沫(別垢) x他2人 | 作成日時:2018年10月14日 1時