朝食は分厚いトーストと書類 5 ページ25
しばらくの沈黙。
「今は教えられない。」
いろいろ言葉を迷った挙句、この言葉を選んだ。
きっと今後彼は自分で、私が何者かを突き止めるはず。
それに、いま水面下で蠢き始めている黒い渦に、まだ幼く可愛い彼を巻き込むわけにはいかない。それこそ“時期尚早”だ。
少し釘を刺しておく必要があるだろうか
「これ以上の詮索は身を滅ぼすことになるわ」
張り詰めた空気の中、仕事用の殺気を出して冷たく言い放つ。
それを見て、にやりと片方の口角をあげた。
「例えそうなったとしても、俺はあんたの正体をあばいてやるさ」
脅しのつもりが、煽ってしまったか
正義感か好奇心かは判らないが、やっぱり彼は新鮮で可愛くて面白い男の子だ。
「それは…何の為?」
「もちろん、1番は、俺自身のためだよ。でも…」
「でも?」
まるで私の心を見透かすような澄んだ瞳。
「…いや、何でもねぇ。」
言葉を濁し、新一くんはコーヒーカップに口をつけた。
「お節介なひと。その歳でこんな調子じゃ、これからの人生大変そうね」
すっかり殺気を消して砕けた調子でそう言うと、
「あんたにだけは言われたかねーよ」
あちらからも冗談めかした言葉が返ってきた。
・
「そういえば新一くん学校は?」
あの緊張した話し合いの後、『朝飯のお礼に』と洗い物をしてくれている新一くんの背中にそう問いかけた
「今日は土曜だからねぇよ。部活も今日は休みだし」
「そっか」
私は、昨日から着ていたタイトなワンピースが、朝食をやたら食べてしまったせいで苦しくなり、新一くんの後ろで躍起になっていた。
…駄目だ。これ1人で着られるけど、1人では脱げないやつだ。
「洗い物してる途中申し訳ないんだけど、新一くん、これ背中のファスナー降ろしてくれる?」
新一くんの隣へ行き、背中を向けてそう言うと、
「っ!ば、バーロー!ふ、服くらい一人で脱げよ!」
中学生男児らしく、激しく動揺していた
それでもお願いすると、「ったく…一人で脱げない服買うなよ」と言うぼやきと共に水が止まった。
しばらくして温かい手が左肩に乗せられると、ジジジと背中から緩まる感覚がした
「はいよ」
「ありがとう!ストーカーも家に入れるもんだね〜!」
振り返ってお礼を言うと、また茹で蛸のように真っ赤になっていた
「ばっ!!!はやく着替えてこいよ!!」
「はいはい」
ジンやバーボンはこんな反応絶対にしてくれないだろう
かわいい弟いじりは、まだやめられそうにない
290人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よしのん - すごい好きです。応援してます! (2022年4月19日 12時) (レス) @page32 id: e3b8c03485 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 面白いです!続き待ってます!! (2022年4月18日 19時) (レス) id: 159bb94574 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいすな - 夢主のキャラ大好きです。新人との関係気になります! (2019年2月16日 22時) (レス) id: a004368014 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:作者A | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/zero1632
作成日時:2018年12月26日 7時