358話 ページ9
「ほら、ここだ」
ボロボロの扉を開けると、古びた和式便器があった。
『ありがとうございます』
個室に入り用を足していると、突然声をかけられた。
「てめぇ、それ本性じゃねぇな」
…やっぱり気づいていたか、ライは。
でも、彼の未来に関わる以上、下手なことは言えない。
『…まぁ、あんたたちの邪魔になるようなことはしない。それは約束する』
手を洗い、トイレを出る。
『上手くやってみせるよ。俺への処分は、その後考えてくれたらいい』
「…読めねぇガキだ」
この時代の赤井さんと今の俺じゃ、ほとんど年齢差はないと思うけど。
『…俺の本性に気づいて、どうして追い出したり殺したりしない?』
「…ふん、使えるものは使うだけだ」
『そーですか』
「作戦決行は明日だ。細かい内容は明日伝える。今はその体調を万全にしとけ。使い物にならねぇようなら捨てていく」
やっぱり、根は優しいんだよなぁ…。
ライが一番厄介かと思っていたが、いい距離感を保てそうだ。
となると問題は…バーボン、か。
怪しい俺に、よく噛み付いてくるし。
今なら赤井さんの気持ちが分かる。
まぁ、面白いからいいけど。
ライと一緒に部屋に戻ると、バーボンに睨まれた。
「早かったですね。てっきり、ライに食い物にされてるのかと思いました」
「こんなガキに興味ねぇよ。…ほら、さっさと寝とけ」
「うわ。絆されたんですか?ライ」
ドン引きを隠そうともしないバーボン。
俺がライに食われようと、今のバーボンは何にも感じないんだろうな、と思うと少し胸が痛かった。
でも覚えておけよ…、未来のあんたは俺にどっぷりなんだからな…!
ベッドに潜り込み、スコッチさんによって再び手錠を嵌められる。
『…ベッド…俺が使ってもいいんですか…?』
「ああ。構わないぜ。いつも大体床で雑魚寝してんだ」
『ありがとうございます…』
お世辞にも寝やすいとは言えないベッドだけど、ありがたく使わせてもらう。
改めて…ここが、零さんが一時を過ごした場所…。
コードネームを貰うまで、やりたくない仕事もたくさん行ってきただろう。
そして今現在も、組織壊滅のためにもっと奥へと入り込もうとしている。
どんな気持ちだったのか、俺なら少しは分かってあげられる。
だから惹かれあったのだ。
あまり、未来の彼を一人にしておくわけにもいかない。
明日の任務が終わったら、ちゃんと帰るから。
待ってて、零さん…。
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096 - 柳さん» いえいえ!こちらこそありがとうございました!これからもよろしくお願いします! (2019年7月13日 14時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 096さん» なるほど、説明ありがとうございました!これからも頑張ってください (2019年7月12日 6時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 柳さん» 現生は、少し乱暴な現金の類語で、生の現金という意味です…!紛らわしい書き方をして申し訳ありません…!ご意見ありがとうございます! (2019年7月11日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - 397話の「い、一回払い…しかも現生かい…」のところ、「現金」ではないでしょうか…?間違っていたら申し訳ございません (2019年7月10日 23時) (レス) id: 6c07f7b951 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 花奏さん» コメントとお祝いのお言葉ありがとうございます!内容をお褒め頂き、とても嬉しいです…!!お気遣いもありがとうございます!これからも頑張りますので、よろしくお願いします! (2019年7月6日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年6月16日 21時