306話 ページ7
・
『おぉ、綺麗…!』
錦座にたどり着き、金色に輝く景色を眺める。
「あまりはしゃぐなよ」
『いいじゃん。イルミネーションなんてちゃんと見たの、子供のころ以来なんだからさ』
「やっぱり興味なかったか」
『違ぇよ。…じっくり見る余裕なんて、なかったんだ。…零さんもだろ?』
「……そうだな」
イルミネーションを見上げる零さんの瞳の中に、金色の光が映りこむ。
うわ…すごい、綺麗…。
「…なんだ?」
『いや…、零さんの瞳に映るイルミネーションのほうが、綺麗だなって…』
恥ずかしいけど素直に述べると、彼は目を見開いた。
そしてすぐに逸らす。
「…煽るようなこと言うな。キスしたくなる」
『っ!?』
さらっととんでも発言をした零さんに驚いた。
『れ、零さんでも、そういうこと言うんだ……』
「当たり前だろ。我慢してることの方が多いんだ」
『へ、へぇ……』
まぁ確かに…キスとか普段はしないし…。
するのは、最中とか…だし。
かと言って、今ここでするわけにもいかない。
イルミネーションを見に、たくさんの人が往来してるし、どこに誰がいるか…。
『――…!』
気配を感じて振り返る。
視線の先に捕らえたのは、黒い影。
今の…もしかして…。
だとしたらここにいるのはマズい。
『…れ…、安室さん、帰りましょう』
呼びかけた本名を飲み込んで、彼の手を掴んで歩き出す。
「は…?何…」
『…ジンが、います』
小さく呟くと、手から彼の動揺が伝わった。
気配は人によって違う。
昔からそういうものに敏感だった俺は、一度会った人間の気配はだいたい覚えることが出来る。
やつら組織の人間の気配は特に分かりやすい。
殺気を纏った、突き刺すような気配。
こっちに気づいているのかはわからないが、早く去らなければ…。
人が多い道を通って、彼らの目を欺きながら駐車場へ辿り着いた。
「…平和なデートは、しばらく出来そうにないな」
『…だな。早く、全部終わるといいな…』
車に乗り込み、小さく呟く。
組織を壊滅させるのは、とてつもなく大変で、生易しいものじゃないと知っている。
その経験があるから、今部外者の俺は余計な手出しはできない。
零さんはそれでも俺を受け入れてくれたけど、やっぱりもどかしいものだ…。
・
1325人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているようで嬉しいです!頑張ります!!これからもよろしくお願いします! (2019年6月7日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします! (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです! (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…!本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします!こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:096 | 作成日時:2019年5月23日 22時