317話 -Side降谷- ページ18
-Side降谷-
寝る前の彼の表情が気になって、一仕事終えた僕はなんとなく寝室に入った。
何か言いたいことがあったけど、ぐっと堪えたような、そんな表情。
『……おと、さ…、…おかあ…さ…』
そっとベッドの中で眠る彼を覗き込むと、泣いていた。
体は大人のものでも、心は子供。
やはり親がいないのは不安なのか…。
…いや、待てよ…?
彼は僕に、親戚の人なのか、と聞いた。
そして、「しっかりしないといけないんだ」と病院で小さく呟かれた言葉を、僕は聞き逃さなかった。
以前、彼は言っていた。
両親は幼いころ、ストーカーに刺殺されたと。
…それは、何歳のころの話だ?
…もしかして、今ここに眠っている彼の記憶は…。
『…ひとりに、しな…で…』
酷い悪夢に魘されている。
「…っ、…楓くん…!」
苦しむ彼を見ていられなくて、肩を揺らして覚醒を促す。
呼び慣れない本当の名前を呼んで。
『っ……!』
ハッと涙の溜まった瞳に僕を映した彼に安堵する。
しかしその瞳はすぐに恐怖と焦燥とが混じった色に変わった。
『やだ、誰…!やめて…っ、連れて行かないで…!』
暴れだした彼に焦るも、抱き寄せて背中を撫でて落ち着かせる。
「安室です…!落ち着いてください。大丈夫ですから…」
『…お、兄さ…?』
「怖い夢を見たんですね。大丈夫です。君に危害を及ぼすものはここにはありません」
そう言って諭すも、彼は僕に縋り付いたまま離そうとしない。
「…温かい飲み物でも淹れましょう。ミルクとココア、どっちがいいですか?」
『……いらない』
首を小さく横に振るだけ。
さて、困ったものだ。
この大きな子供をどうしたら、安心させられるのか。
『…一緒に、いて…』
震える体から小さな声が漏れた。
『どこにも、行かないで…。独りに、しないで…』
その懇願に、きゅっと胸が締め付けられる。
こいつは…幼いころからずっと独りで…大人になってからも孤独で…。
両親が亡くなって施設に預けられることになっても、甘えることも頼ることも出来なかったんだろう。
その名残が抜けないから、彼はいつも一人でなんとかしてしまおうとする。
僕には頼ってと言っておきながら、自分はいつも一人で…。
「…一緒に寝ようか。どこにも行かないよ」
そう言うと、ようやく彼は僕を見た。
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096 - ayumigomaさん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけているようで嬉しいです!頑張ります!!これからもよろしくお願いします! (2019年6月7日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
ayumigoma(プロフ) - 楽しく読ませて頂いています。頑張って下さいね(〃ω〃) (2019年6月7日 0時) (レス) id: 364bfd5e94 (このIDを非表示/違反報告)
096 - りりこスタイルさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただける小説を書きたいと思いますのでよろしくお願いします! (2019年6月4日 12時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
りりこスタイル - いつも楽しませてもらってます。これからも応援してます。続き楽しみです! (2019年6月3日 22時) (レス) id: b80200442e (このIDを非表示/違反報告)
096 - シズキさん» そこまで言っていただけるとは…!本当に嬉しいです!!これからも、飽きさせてしまわないよう、試行錯誤して書いていきますので、よろしくお願いします!こちらこそありがとうございます!! (2019年6月3日 22時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:096 | 作成日時:2019年5月23日 22時