86話 -Side降谷- ページ37
身寄りのない彼に一番近い存在は自分だと思っていた。
一緒に住んで、探偵業の助手として、僕が一番理解して、分かっているつもりでいた。
それなのに結局、彼は僕に何も話そうとせず、一人苦しんでこうして眠っている。
本当のことを言えたら楽なんだろうな。
僕が公安警察、ゼロの一人で、組織に潜入している潜入捜査官だと。
事情を明かして理解してもらえば、彼も自分のことを少しは打ち明けてくれるだろうか。
でも、それは出来ない。
完全に疑ってはいないが、彼が敵だったとしたら。
組織について彼は知っていた。
でもハッキリと、組織と関わってはいないと言った。
それが嘘だとは限らないから、僕の素性を簡単に明かすのは命取りだ。
「黒瀬さんは、安室さんのこと信じてるよ」
真っ直ぐな目で、コナンくんは僕を見上げていた。
「僕、もう行くね。黒瀬さんが目を覚ましたら連絡ちょうだい。…安室さんは傍にいてあげてね」
そう言って、コナンくんは病室を出て行った。
やっぱり、どこか大人びた少年だ…。
「信じてる…か」
素性も明かさない、嘘つきな僕を、君は信じているのか。
今朝の拒絶は、なかなかに傷ついた。
いつの間に、こんなに大切な存在になったのだろう。
出会ったときから、何か感じるものがあった。
だから、普段は入れない自分の領域に他人を入れたんだ。
いつの間にか、おかえり、と出迎えてくれる君に安心して、逆に真っ暗な部屋に帰ると不安になった。
僕の知らない女性と一夜を過ごしていると知ったときは、胸のモヤモヤで吐き気がした。
「早く、目を覚ませよ」
今日食べられなかった朝食を、一緒に食べよう。
放っておくと、君はすぐコンビニ弁当を食べるんだから。
車の中で、他愛のない話をしながら、お互いの腹を探り合おう。
同じ家に帰って、たまには酒を飲もう。
大切な人はもう作らないと決めた。
それでも彼は、僕の心に入り込んできて、頭を撫でる。
一人じゃないと、言われているようで安心した。
僕のしていることは、間違ってはいないと。
確実に僕は、彼――黒瀬Aという人間に変えられてしまったようだ。
「お前がいないとつまらない…」
降谷零の小さな呟きは、誰にも聞かれることなく病室に溶けて消えた。
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鹿野ユズナ(プロフ) - いえ、お力になれたようでよかったです！ (2019年4月25日 11時) (
レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 鹿野ユズナさん» コメントありがとうございます！恥ずかしながら、ずっと勘違いしておりました…。次回から気をつけます！ご指摘本当にありがとうございました！ (2019年4月21日 21時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - こめかみ、漢字変換が全てお米の神様になってます………… (2019年4月21日 5時) (レス) id: f48090b258 (このIDを非表示/違反報告)
096 - 大福さん» コメントと嬉しいお言葉ありがとうございます！これからも読みやすく楽しい小説を目指して頑張るので、よろしくお願いします！ (2019年3月13日 20時) (レス) id: d9ca70487a (このIDを非表示/違反報告)
大福 - 楽しく、読みやすいです。続きが気になります！次の更新楽しみに待ってます。 (2019年3月12日 16時) (レス) id: 2b112b86de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：096 | 作成日時：2019年2月11日 21時
